<チェックライド当日>
チェックライドは午前7時半から始まった。その日はカウアイ島を寒冷前線が通過しオアフ島に接近しつつあるという気象状態であった。フライトプランはホノルルからカウアイにいくものを作成するように事前に試験官から指定されていた。試験では実際にカウアイまで飛んでいくことはしないが、もしすることになっていたとしても、私だったら今日は飛ばない。というぐらい活発な雨雲がレーダーから見てとれた。
試験官はジョージアという日系のおじいさんでスクールでもよく見かける優しそうな人である。
「今日は天気が悪くなりそうだから早くフライトに出たいね。君が全ての問題にスラスラ答えてくれたら口答試問は早く終わるからね」と笑って言われた。
私は「問題の数を減らしてくれれば早く終わるのにな」と心の中で思ったけど…。質問は各分野からまんべんなく出される。基本的な事を押さえていれば、いくつか分からないことがあっても大丈夫。試験官というより教官のように教えてくれる。まず天気の概況を説明するように言われ、続いて「君だったら今日カウアイ島に行くかい?」と聞かれた。私は「行きません。レーダーに強い雨雲が映っているのを見てきましたし、雲も低いので有視界飛行は出来ないと思います」と答えた。ジョージアは「そうだね。鳥は飛ぶために生まれてきたのに、天気の悪い日や夜には飛ばない。まして飛ぶように出来ていない人間がどうしてそんな日に飛ぶ必要があるだろうか。周りがなんと言おうと、君が飛ぶか飛ばないかは最終的に君だけしか決められない。いつでも『今日は飛ばない』と言える勇気を持つように」と言った。
プリフライトチェックをする間に雨も降りだしたが、なんとか雲の切れ間も見えてきていよいよ出発することになった。しかしATISを取ってみるとなんと・・・今日はホノルルでは珍しいコナウィンド(南西風)が吹いている。通常ホノルルはほとんど北東貿易風が吹いているのでランウェイはいつも04を使用している。
実は私は反対側の22を使ったことは一度もなかった。
「なんてツイてないんだろ、ランウェイ22だよぉ〜、カラエロアの着陸だっていつもと逆回りになっちゃうし、地上目標を基準に行う操縦も風向きが違うと始める位置がいつもと違う」不安が募る中、練習空域に行きあれこれ指示される。
一番の懸念、失速は思いの外うまくいった。だが、S-turnをやる時あれほど今日は風向がいつもと逆だから、と気を付けていたのに、なぜかいつもと同じ方向から始めてしまう。風下に向かわなければならなかったのに、風上に向けて始めたので機体が流されS字にならない。
「アレッ?すいませんもう一度やります」そう言ってもう一度トライ。うまくいかず頭が真っ白になっているため風向きの事など全く気付かなかった。
再度のトライも結果は一緒。ついに試験官が「風上に向かっていくならもう少しターンを待たないとだめでしょ」と教えてくれた。「そうだった…」そして3回目のトライでやっと出来た…。
