RUNWAY24は・・・パイロットへの滑走路、この空を飛びたいという夢に向かって・・・Take-off してみませんか

Sky Cap

出来ることは渡航前に全部やってしまえ!

1039842174[1]こんにちは。Runwayさんのご紹介でハワイで自家用操縦士の訓練を行った天一郎です。現在は事業用操縦士(単発)、287時間飛びました。

■出費は惜しんでも時間は惜しまず
情報はいろいろあれ、渡航前はいかに費用を安くして効率良く訓練を進めるかに苦心しました。
本当にゼロから始めて座学も全部現地で行うのが一番安いかな…などとも思ったりしましたが、ちょっと考えました。
「パイロットは一生勉強の連続という。だったら別に今から勉強する時間まで惜しむことはない」。幸い、飛行機の知識はありましたし、飛べないまでも、勉強は地球のどこでも(その気になれば宇宙でも)できます。そのための支出など微々たるものです。そう思った次の瞬間から、日本にいる間に何ができるか、リストアップに入りました。

■まずは学科対策を
実地訓練に入るまでに、自分の力で意外と多くのことができます。アメリカの場合、学科試験は問題が全問公開されており、その中から無作為に選ばれたものをコンピューターの端末で回答していきます。公開問題を分野別に編集し直した問題集がいくつか出ていますが、まず学科対策としてその通読を繰り返しました。実は、これで飛ぶための知識もある程度習得できるので、一挙両得です。

■実技も日本で
実技もある程度日本でやってしまうことにしました。でも、実機なんて飛ばせません…そう、シミュレーターを活用しました。PCパイロットとしてはいろいろ操縦していましたが、小型機の操縦手順、ましてや本当に管制空域を意識しての飛行、しかも規則にそった有視界飛行(VFR)のやり方など、全然知りませんでした。一方で、実際に飛んでみるまで、あるいは誰かに教えてもらうまで、実際にどういう様子で飛ぶのかは皮膚感覚としては理解できないなと思いました。

そこで、模擬飛行は渡航先訓練空域(私の場合はホノルル)と使用予定機材(同C172)を設定して適当に飛んで、離着陸を繰り返しました。実際の有視界飛行では飛行場の場周経路(トラフィックパターン)を飛びますが、この段階ではお構いなしです。

これは効きました。というのは、実地訓練開始時の飛行時間はもちろんゼロだったんですが、初回訓練で結果として着陸まで自分でさせてもらえたんです。で、教官が「今日が初めてじゃないよね」というので「初めてです」といったところ「いや、何かやってただろう」と聞き返すのでシミュレーターをやってた旨話したところ、「君の前の回に飛んだ生徒も初めてだけどやっぱり着陸させて、シミュレーターをやってたって言ってた」んだそうです。教官曰く「何かやってたかどうかは見れば分かる」。シミュレーターも侮れないなと思った瞬間でした。

■練習回数で勝負=管制機関との交信
もう1つの実技は、飛行と同様に重要な管制通信です。交信せずに管制空域外を飛ぶことも理論上は可能ですが、例えばホノルルは大型機も飛来する多忙空域。管制塔と交信できなければ駐機場を動くこともできません。

ここでもシミュレーター、今度は交信練習用ソフトの登場です。VFRと、大型機の運航を収録したビデオなどでお馴染み、管制官の誘導を受けて飛ぶ計器飛行方式(IFR)の交信は、互いに別の目的があるためにスタイルも自ずと違ったものになります。

いくつかVFR用シミュレーターソフトが出ていますが、このソフトを使い、想定される状況を一通りさらっておきました。好きな時に何度でも繰り返せますし、しかも丁寧に字幕も出ますので「この“音”はこういうセリフを言ってるのか」と確認するのに持ってこいです。さらに、状況に応じて無線機の周波数を変更するという設定もあって、その周波数探しをさせる機能もあったりするので、非常に実践的と言えます。免許を取ってからしばらく間が空いてしまう場合の練習にも使えます。

仕上げは、速射砲のように話される実際の交信に耳を慣らすこと。これはインターネットで公開されているリアルオーディオのサイトをつなぎっぱなしにしておきました。いろいろな周波数を適宜移動しているようなので慌ただしいですが、純粋に耳慣らしなので、気にしませんでした。ニューヨークのケネディ空港などに合わせると日本の航空会社のパイロットの声も聞こえますが、一度聞いてみてください。「交信も技術」であることが分かると思います。

■費用は…
シミュレーターの類は、好きな人なら1本は持っていることでしょう。値段は何を持っているかによりますが、1万円前後でしょうか。交信練習用ソフトは7千-1万5千円の範囲であるようです。問題集はほとんど米社に限られますが、同じ物が1500-4000円の範囲で入手できるようです。通販をうまく活用するといいのではないでしょうか。

さらに、短期決戦で臨む場合、身体検査も日本で受けてしまう手もあります。現地で70-80ドル前後で受診できるところ、2万数千円かかりますが、時間を有効に使うという点では一考に値するかと思います。身体検査証明がないと単独飛行に出られないので、考慮しておくとよいでしょう。検査を含む全手続きは1時間もかかりません。アメリカ連邦航空局(FAA)のホームページに「海外の航空身体検査医」というリストもあるので、詳しい方に聞いてみましょう。

■時間がない…
時間がない、あるいは時間はあるけども仕事で疲れてとても何かする気分じゃない、ということが、実は準備の大きな障害だったりするかもしれません。私は比較的知識のある所から入ったと(勝手に)思っていたのでその点楽でしたが、それでも渡航前はそれなりに意識して時間を作るようにしました。

私も勤め人です。昼休みは食事もそこそこに問題集を開き、終業後も喫茶店で1時間ほど時間を作って問題集の続き。帰宅後はシミュレーターのほか、模擬試験問題サービスを行っているアメリカの会社のホームページで模擬試験を受けたり(60日間で約30ドル)するなどして準備を進めました。まとまった時間を取れるのが最善なのかもしれませんが、つぎはぎの時間でも計3時間くらいにはなりますし、かなり多くのことが出来るのではないかと思います。

■先々の余裕を生むために
1時間飛行しただけでもかなりの精神的・身体的ストレスが生じます。新しく物を覚えるのも、上空では特定の状況下における特定の手順を覚えるのが精一杯で、総体的な科目について講義を受ける時間もなく、環境的にも適していません(ヘッドセットを付けての訓練ですので、あまり落ち着いて物を学ぶという感じではないので…)。

よく言われますが、飛行機の宿命として、滞空時間が限られていること、その間に状況が刻々と変化するためにじっくり物を考える時間がないこと、といった点があります。そのため、どんな場面でも「地上にいる間にできることはすべて済ませておけ」と言われます。どんなに訓練が進んでもそうです。そのために、やはり渡航前の入念な準備はしてもし過ぎることはないのではないかと思います。周到な準備をすればしただけ自分の実になることですし、それだけ実技の短期習得にもつながります。また、訓練基地を離れての飛行を楽しむ余裕も早く味わえるようになるのではないか、と思います。

準備に集中している間は、正直言ってあまり愉快な時間ではありません。それでも、やっていて無駄になる準備は1つもないことが、私の短い経験でも言えるかと思います。べらぼうに高いお金はまったく必要ありません。これから訓練をなさる方も、現地での飛行を思う存分楽しまれるためにも、自力で、あるいは経験者の助けを借りて、日本にいる間に入念な準備を重ねられるようお勧めする次第です。

ATCとの会話

1039841602[1]こんにちは、天一郎です。Runwayさんもご指摘の通り、地上の管制官(ATC)との交信は飛行中のパイロットの命綱と言えます。特に多忙な空域では、管制官がレーダースコープを見ながら飛行機を手早く列に並べ、各飛行機の運航をできる限り円滑に進めるよう苦心する様子がうかがえます。

そのため、同時に複数機を担当する管制官はえてして早口で話しがちですが、決して聞いたことのない文章を話しているわけではありません。定義が厳密に定められた用語を使ってパイロットとの意思疎通を図っています。私の知る範囲では、英語が母国語のアメリカのパイロットと管制官はこの厳密さを微妙に逸脱しつつ交信しているように見受けられることもたまにありますが、外国語話者としてはこれにひるむ必要はありません。堂々と管制用語を駆使して安全に飛びましょう。「通信は技術」です。

■言い直して欲しい時
ちょっと上級編になりますが、管制官に何か言われ、何かを聞き取ったものの今ひとつ自信がない場合、「confirm ~」と言って、言われた内容を確認する方法があります。一般には「say again」と言ってもう一度聞き返すことをためらうな、と教えられますが、一部にはパイロットが置かれた状況を知らない管制官がいるようで、明らかに不快そうに指示を繰り返す場面にも遭遇します(say again をためらうな、という警告は常に最重要な教えであることに変わりはありません)。そんな管制官に、丸々全部言い直してもらうよりも「聞き取ったけど確認してほしい」というニュアンスを込めて使うのが confirm かもしれません。

この confirm、高度、針路、周波数など、ある数字を確認するのに有効です。一例ですが、地上から「Cessna●●,contact Honolulu Approach on 119.3,」と指示されたことがありました。「119.3」は航空路管制の周波数、ホノルル進入管制は「119.1」のはずでした。そこで「Confirm 119.3 for Honolulu Approach, Cessna●●,」と言ったところ、「Contact Honolulu Approach on 119.1,」と言い直したので「Roger,」と言って周波数を切り替えました。

その他、有視界飛行で多忙空域に入る場合もレーダー管制を受ける場合がありますが、その際に飛行高度を指示されることがあります。高度を間違えると他機とのニアミス、または空中衝突の危険性も出てくるので、十分に確認しておきたいところです。

有視界飛行で多忙空域「クラスB」に入る際、こんな指示を受けたとしましょう「Cessna●●, cleared into Class-B airspace via Interchange. Maintain 2000 feet until further advised.」割と短い部類の指示ですが、最初は舞い上がって数字を取り違えることも十分にありえます。復唱する時に「Cleared into Class-B…」で詰まってしまいました。こんな場合に限って後続機が何機も空に輪を描いて待機しています。すかさず「…confirm maintain 2000?」と聞いてみましょう。管制官は「That’s correct」または「Affirmative」と言って正しいことを確認してくれるでしょう。

■別バージョン
同様の用語に verify というものがありますが、これは管制官からレーダーに表示される数字と実際の数値を照合するために使われることがよくあるようです。「Cessna●●, verify altitude 3500 feet,」と言われ、実際は3100フィートだったとします。そんな場合は「Negative, passing 3100 to 3500,」と答えます。

■文法は飛ばして
用語を適切に組み合わせることで簡潔に用を足すことができるのが、管制用語の特徴です。これまでに習った標準的な英語の文法よりも簡単に用いることができるものです。

標準会話では、人にものを頼む時に「Can you give me ~」などの表現を使ったりしますが、管制用語では「Request ~」で終わりです。高い高度に上昇したい場合は「Request higher」周波数を知りたい場合は「Request frequency for ~」などなど。

また、継続中の飛行ができなくなった時、機体の性能上の問題で管制官の指示に従えなくなった時などは「unable」を使います。私の夜間飛行で、有視界で出発したものの雲が出て感覚を失いかけ、計器飛行方式に切り替えるために「Unable continue VFR, request IFR to ●●」と管制官に要求し、許可を得てそのまま計器飛行方式で目的地に向かったことがありました。

■パズルのように
数ある用語の組み合わせで簡潔に要領良く交信することで、管制官からも迅速なサービスが受けられます。流れに乗るまでに少々の慣れが必要ですが、自分の飛行状況が分かるにつれて交信技術も向上しますし、交信技術の向上で飛行にも余裕が出てきます。

実際にはパターン化された交信が多く、すぐに覚えてしまえるものが多数あります。交信に数多く触れることが上達の秘訣ではありますが、パターンを多く知っていれば空中での対応も早くなります。考える前にどんどん聞きましょう。

敵を知り己を知る①(必要な飛行経験)

1040274048[1]出ずっぱりの天一郎です。「敵を知る」などというと少々物騒ではありますが、対象を研究して効率のいい訓練プランを練るのは有益なことかと思うので、訓練前に不透明と思われる部分についていくつかお話ししてみます。

訓練を始める前の不安材料はいろいろありますが、大雑把に言って「到達目標がどこにあるか分からない」という点が挙げられるかもしれません。訓練校探しにしても、免許取得までの時間数は示されるものの、どうしてその時間が必要なのか、という疑問が出てくることと思います。自家用で最低40時間の飛行経験が必要ですが、それではどんなことをするのでしょうか。

■法律では
アメリカ航空法(FAR)にパイロットの資格要件を定めたパート61という章がありますが、その109条に自家用操縦士に必要な飛行経験が列記されています。総飛行時間は最低40時間で、次の要件を含むものとなります(単発機の例)。
●飛行教官による20時間の同乗飛行で、以下の要件を満たしたもの
1.3時間の野外飛行
2.次の要件を満たす3時間の夜間飛行
a.総距離100カイリの野外飛行
b.場周経路による10回の離着陸(着陸は完全停止によるものとする)
3.計器のみを参照しての直線飛行、等速上昇・降下、指定方位への旋回、
異常姿勢からの回復の各操作方法、および計器飛行に関する無線通信、
航法装置・航行援助施設、レーダーサービスの利用方法
4.実地試験前60日以内の3時間の準備訓練

●以下の要件を満たす10時間の単独飛行
a.5時間の単独野外飛行
b.総飛行距離150カイリの単独野外飛行で、3地点での着陸(完全停止に
よるものとする)および50マイル以上の区間を含むもの
c.管制塔が運用中の飛行場で行う、場周経路による3回の離着陸(着陸は
完全停止によるものとする)
飛行に関する総合的な訓練項目(飛行前準備などを含む)は別の条文に列記されていますが、これは毎飛行を通じて教官から逐次指示されるので、そこで確実に手順として覚えることになります。

■単独飛行に向けて
当面は、誰の助けも借りずに無事に飛行機を離着陸させられるようになることが最初の大目標になります。最初の単独飛行「ファースト・ソロ」です。教官がソロを許すということは、すなわち一通りの操作を自分でできるようになったと認められたということで、これが早いうちに認められれば上記の40時間のうち10時間分が早く終えられることになります。

何時間でソロに出られるか、訓練生の集中力が問われるところではありますが、ここでは、純粋に飛行機の操縦技能を判定するので、できれば事前に旋回、失速などの各種操作を何度も繰り返せるのが望ましいかと思います。実機の感覚はとても得られませんが、操作そのものはシミュレーターでもある程度の確認が可能です。

■PTS
ではどのような操作が必要なのか。アメリカでは実地試験を前に、各種操作の判定基準を定めた「Practical Test Standard」(PTS)と呼ばれる実施要領を入手することになりますが、実地試験はその内容に沿って行われます。

FAAのホームページでも入手できますが、そこに審査項目などが網羅されています。ここに、離着陸のほか、通常旋回、急旋回、上昇・降下、失速などの判定基準が書かれているので、ある程度知識があればそれにそって事前に練習することができます。日本語でも操縦教本の類が売ってますが、それを読んでも参考になるでしょう。

敵を知り己を知る②(野外飛行に必要な知識)

1040274322[1]「1」でお話しした部分で、飛行機の操縦については各種「G」のかかり方や物の見え方など、実際に飛んでみないと分からない部分が多くあり、何回かに分けての訓練で感覚を思い出すのに少々時間がかかるところかと思います。

それも最小限に抑えられれば言うことはありませんが、飛行要件にあるうち野外飛行は、飛行そのものよりも管制官との交信など、各種手順に関する知識が大きな位置を占めます。したがって、これに向けて入念な下準備を積めば訓練がかなりスムーズに進みます。

■野外飛行に必要な知識
ほとんどは学科試験で網羅されていることなので、来たる野外飛行訓練を想像しつつ学科を準備したいところですが、まずは飛行計画の作成が重要な作業になります。

飛行計画には当座の飛行に必要なあらゆる要素を盛り込むことになります。飛行ルート、巡航速度、機首方位、使用無線標識または地上目標、風向き、地磁気によるコンパス誤差、飛行高度、気温、燃料消費率、などなど。飛行ルートの設定にあたっては、事前に気象情報を入手しておく必要もあります。その情報をどのように入手するか。

また、ノータム(NOTAM=NOTice to AirMan)というパイロット向けの情報で滑走路の閉鎖、飛行制限空域の設定など、飛行に関わる各種情報を確認しておくことも重要です。滑走路が1本しかない空港で滑走路補修工事があるとの情報があった場合、その空港には降りられないので、別のルートを設定することになります。

飛行機の性能も確認しておきます。初期段階では性能ギリギリの飛行をすることはほとんどありませんが、それでも実際にどのくらいの余裕の下に飛行をするかを知っておくことは重要です。訓練初期に訓練機のマニュアルを購入することになると思いますが、必要なページを読んで諸元の見方を覚えておくと、まったく新しい機体に乗ることになった時にも応用が利くので(マニュアルのフォーマットはFAAの基準で定められています)、機会を作って繰り返し読んでおきたいものです。

もちろん、航空図も読めなくてはなりません。記号の読み方などは学科試験でも問われますので、その時点ですでに準備が始まっていると言えます。また、飛行針路・距離は図上に線を引っ張って専用の定規(プロッター)で測るなどしますが、これは実際にうまい方法を教官が教えてくれるかと思うので、適宜聞いてみるといいでしょう。

■実地で役立つ下準備
渡航前の準備の重要性について以前に書きましたが、上に触れた各種情報の入手方法は、すべて学科試験の準備段階で何回となく触れられており、学科に合格していればある程度の知識として身に付いているものと仮定されます。

実践に移すまでに時間が空いてしまうと忘れてしまうかも知れませんが、まったくゼロの状態から覚え直すのと以前に学んだことを思い出すのでは、効率に差があることは言うまでもありません。飛行の大まかな流れをつかむのにも、学科試験の準備で得た知識が十分に活用できますし、それは繰り返し学ぶことで一段と定着していきます。できるだけ早い段階から、少しづつでも準備を進めることをあらためてお勧めする次第です。

敵を知り己を知る③(教官との対し方)

1040174475[1]「敵を知る」シリーズその3は、免許取得まで訓練生を導いてくれる教官との対し方についてです(「敵」呼ばわりするのは失礼ではありますが…)。ここで一番心配なのは英語力かもしれませんが、程度の差こそあれ、いずれは誰でも一定の英語力が必要になるのは言うまでもないので、ここではあえてこれ以上は触れません。ここでは、自分のペースで訓練を進めるために大事かなと思われる数点についてお話ししてみます。

■訓練生は顧客である
教官と訓練生の関係というと、我々はとかく主従関係に似た関係を想定しがちで、主である教官の言うことに一切の疑問をはさまずに従おうとします。ですが、訓練地は日本ではなく、外国。訓練生は安からぬ代金を払っている「顧客」、まずこのような意識を強烈に持つことが、英語力以前に非常に重要だと思います。

多少英語ができなくても、自分が訓練でやりたいことがあれば遠慮なく要求する。教官もそれを期待しています。別に英語を勉強しに行くのではなく、操縦を習いに行くのです。英語など、個人的には「ドシーンと着陸しちゃって、まずかったね」と言いたい時に「My landing, too hard. Not good,」程度から始まってもいいと思います。

ある訓練科目がうまくいかないとしましょう。訓練を前にいろいろな選択肢があります。苦手科目を続ける、とりあえず別の科目に進む、または思い切って休む…予定の時間には2時間のスケジュールが組まれていますが、どうも疲れてて集中できそうにない。そんな時は遠慮なく休みたい旨を伝えます。教官もその辺は承知してますので、「OK」と言ってくれることでしょう。その際、我々の目にはずいぶん素っ気ない返事をくれることと思いますが、特に悪気を持っているわけではありません。その点非常にビジネスライクです。

あるいは、めちゃくちゃ調子がいいのでスケジュールにあるよりもガンガン飛びたい場合(1日2-3回程度、あるいはそれ以上)、そんな場合もスケジューラー(と教官)に言ってみます。ある機体がそのまま使えれば時間を延長してくれる、または続く訓練生の機体を変更してくれる、またはいったん帰ってきて別の機体に乗り換える、などの手配をしてくれます。

シミュレーター(FAA公認で飛行時間として記録できるもの)で代用できる訓練科目もあります(自家用後になりますが)。どうしても実機でなければならない事情がなければ、ある時間の訓練をシミュレーターに切り替えることも自由です。「今日はシミュレーターにしたい」と言えば、訓練進度などに応じて「OK」サインが出ることでしょう。

■どうもこの教官では…
いずれの教官も、FAAの定める基準に従って「教授法概論」など、訓練における心理的側面について一応の学習を経た上で教育証明(CFI)を取得、訓練に当たります。それでも、訓練の初期段階、あるいはある程度の時間を経て「どうもこの教官合わない…」ということが出てくるかもしれません。多くの人が「あの教官いいよ」と言っているとしても、自分自身に合わなければどうしようもありません。

ここで我を通し、「教官を変えて欲しい」と要求します。私は経験がありませんが、節目節目で別の教官に訓練進度を見てもらうことなど、システムとして行われている以外にも結構頻繁に行われていることです。変えてもらう時に、これまでの教官に気兼ねする必要はありません。その教官は通常の時間にはいい人かもしれませんが、必ずしも自分のニーズ、飛行中の自分の感覚に合わない人かもしれません。「こちらは金を払っている。自分のニーズに合わせられないそちらが悪い」くらいのつもりでいても悪くはないでしょう。それで担当を外れた教官との関係がこじれたりすることも特になく、ここでもやはりビジネスライクな感じです。

■英語
やっぱり触れざるを得なくなりましたが…ATC、実地試験(と口頭試問)で必要になりますし、もちろん日々の意思疎通で必要になるので、できる限りスムーズに進むよう努力はすべきですが、思うようにできないからといって過度に卑下する必要はないと思います。

聞いてて分からないところがある、こちらの発音が伝わらない、…いろいろ問題はありますが、こんなに一生懸命やっているこちらの外国語をあちらも理解すべき、ということも言えます。また、「英語が苦手」といっても、パイロットとして飛ぶのにあらゆる英語力が必要かというとそうではありません。

FAAの資格要件に「英語ができること」とありますが、資格要件に関する様々な問い合わせを網羅したFAAのQ&A集で、「英語ができること」とは「ATCなど、航空業務を支障なく遂行するのに必要な範囲の英語である」旨の記述があります。

かくいう私個人は、実は比較的英語の苦労の少ない方だと思いますが、それでも訓練を終えて飛行機を降り、事務所へ帰る時に教官に軽口を叩くなど、能力的に大きな負担です。教官を横にしながらほとんど無言のまま事務所へ帰ることもまれではありませんでした。それでも、教官と飛行機の話をし、気象サービスを受け、管制官と交信し、実地試験も受け、ささやかな経験を積み重ねています。

■ずうずうしいまでの積極性を
日頃よき日本人として平穏に生活している我々にとって、能動的に目的に邁進することはある種のバトルにさえ映るかもしれません。しかし、安いとは言えそれなりのお金を払って自分が得たいものを得る、そこに遠慮を差し挟む余地があるかどうか…私は不要だと思います。訓練過程で自分の意思を明らかにしていく、それが実は、飛行機の運航に最終責任を負う機長(Pilot in Command)としての心構えを育てる大切なステップなのではないでしょうか。

免許を取ったら独りで飛ぶこともあるかもしれません。重大な決断を迫られる事態になった時(旅客機ではなく、小型機でもそうした事態に遭遇する可能性は十分にあります)、最終判断はすべて機長に委ねられます。法律でもそう定められています。管制官も機長の要請を支援するだけです。

自分の針路は自分で決める…この強烈な意思を持つことが、教官との対し方でも重要なのではないかと思います。そして、分からないことはどんどん聞く、明らかに分かってると思われることでも聞く、ただの確認でも何でもいいから聞く…教官は情報の宝庫、そしていろいろ教えたくてウズウズしてます。「そんなこと聞くな、自分で考えろ」とは絶対に言いません。訓練生は顧客です。自分でもずうずうしいと思うくらい積極的に動きましょう。(この章終わり)

初日から乗る

1041129851[1]天一郎です。
前置きが長くなってしまいましたが、いよいよ飛行訓練に入ります。
少々前のことなのでうろ覚えの部分もありますが、ログブックなどを
参考にできるだけいろいろ思い出して書いてみようと思います。

■初日からいきなり飛ぶ
私の訓練地はハワイのホノルル、もちろん国際空港です。そこにあるとあるスクールで訓練を受けました。渡航前からいろいろ聞いて準備はしていましたが、やはり実際に現地に赴いてみるといろいろ緊張するもの。

スクールのドアを開き、「今日から訓練を受けることになってる天一郎です」というと、訓練生の登録用紙を書くようにと言われました。一通り書き終わると、そのスクールで担当になる教官2人のうち1人を紹介されました。なかなか当たりの柔らかい感じの人です。後に聞いた話では、節目節目で各訓練生に同乗して訓練進度をチェックする資格を持った教官とのこと。経験豊かなそのスクールの教官連の中でもベテランの域にいます。

簡単な説明を受け、予約してある機体の飛行記録がまとめてあるバインダーとヘッドセットを受け取り、早速飛行訓練に入ります。いきなり本質から始まる…無駄を省いた合理的な訓練方法と言えるかもしれません。このペースに乗り遅れないよう、入念な準備が生きる時です。

いざ空へ

1041129955[1]エンジン始動、蛇行…
機体の外観チェックとコックピットのチェックは、用意されているチェックリストに従って確実に行います。ここで教官から注意すべき点について説明がありました。

コックピットに乗り込むと、各種チェックを進めながら風向・風力などのデータを無線で入手、管制塔から出発許可をもらいます。ここで空港を出発する方向、維持する高度、レーダーの識別番号などをもらうことになります。初日は確かほとんど教官がやってくれたような…。

チェックを進め、エンジン始動。タイミング良く混合気レバーを押し入れてやるのに少々コツがいりましたが、何とか始動し、若干上げ過ぎていたスロットルレバーを指定位置に戻し、チェックを続行、その後はエンジンの回転数を上げて油圧・油温、各種計器のチェックに移ります。

一通りのチェックが終わると、いよいよ踏んでいたブレーキべダルを離して地上走行へ。ここでも管制塔から許可を取って滑走路手前の指定位置まで誘導路を走行します。エンジンを調整し、ブレーキも片方づつ微妙に踏みつつ直進しますが、スピードの加減と左右のペダル(今度はべダルの下の方で前輪を操作します)を踏む感覚が分からず、壊れたゴーカートのように蛇行してしまいました…。

その間に「管制塔(タワー)を聴取せよ Monitor tower.」との指示。これまでも管制塔の管制官と交信していましたが、今度は滑走路上の飛行機を担当する、文字通り「タワー」と呼ばれる管制官と交信します。この間に、誘導路の指定位置で停止、「タワー」の指示を待ちます。別の滑走路を離着陸する飛行機や、これから離陸する滑走路に下りてくる飛行機などを待ちますが、混雑時はペダルを踏みながらジリジリする時間です。

「離陸位置につけ Taxi into position and hold.」ついに順番が回ってきました。ここで最後にチェックすべき数項目を終え、最後の指示を待ちます。その間に、教官から「今日は横風だから横風離陸で行ってみよう」との指示…今日が初めてだっていうのに…と思いつつ、とりあえず風が吹いている右に操縦桿を倒しておきます。そしてしばらくジリジリ…と、

■離陸!
「離陸よし Cleared for take-off.」目の前に伸びる中心線、ここをまっすぐ走って離陸です。

覚悟を決めて「行きます!Let’s go!」操縦桿は右へ倒したまま、スロットルレバーをいっぱいに押し込み、ペダルを左右に少しづつ踏みながら滑走、「少しづつ操縦桿を中央に」という教官の声、徐々に速度が付いてきます。

そして、引き起こし。「重い…」昇降舵の釣り合いが崩れていると少々重く感じますが、そこは初日。教官が小刻みに調整してくれました。さらに、引き起こしと同時に右のペダルを踏み込む(方向舵を操作)のも大事な操作です。これで飛行機はまっすぐに上昇していきます…というのはもちろん、すべて後知恵。

ここで「タワー」から「出発管制と交信せよ Contact departure.」の指示。空港周辺を監視するレーダーによる管制を受けます。

初日は訓練空域へ向かって飛びましたが、そこは初めて自分で操縦しての飛行、まず「小型機というのはこんなに揺れるのか」というのが正直な感想でした。ジェットコースターのような急激な揺れこそありませんが、初めて聞くコックピットの風切り音など、初日の不安をあおるのに十分なアイテムと言えました。

■空中操作の第1歩
しばらく教官の指示で巡航、方向を維持していると、レーダー空域から離れるとの通知。ここでいよいよ訓練空域に入ります。何度も繰り返すように、今日は初日。飛行機の基本4技能と言われる「上昇・下降・旋回・水平飛行」を教官の指示で実施します。

スロットル、操縦桿、ペダルを適切な量だけ操作しますが、まず「釣り合いの取れた操作」というのは、この時点では分かりませんでした。旋回する時に操縦桿を倒すのと同時に適宜ペダルを踏むことは、理屈では分かっていても手足が追いつかず、いわゆる「滑る」状態で飛んでしまいます。ペダルは、上昇・下降時のスロットルの操作による片揺れを抑えるためにも踏むので、当面はこの感覚をつかむのが先決なんだろうか…などと思ったりしました。

初日、しかも日没も近いとあって、とりあえず訓練はここまで。教官は「Good!」と言ってくれるものの、まだまだ簡単な操作。これから山のような課題が控えています。それにしてもわずかな風ですぐに流される飛行機の操縦、大変なこった…。

誰もが通った道

1042199651[1]■いつの間に
訓練空域を離脱、帰りは進入管制官(出発管制官と同じ)に空域進入の許可をもらい、教官の指示通り空港に向かいます。

空港に近づき、再度「タワー」と交信。着陸滑走路と並行に反対側へ飛び、スロットルを絞りつつ徐々に高度を下げます。そして「着陸よし Cleared to land.」の指示が出て、下げ翼を出し、しばらくしてから滑走路と直角をなすように左旋回。下降を続け、左旋回して滑走路と正対します。この長方形が、場周経路 traffic pattern です。このまま高度を下げて、間もなく接地。そろそろ教官に交代を…でも教官は何も言わず、ただ「はい、スロットルをいっぱいに絞って、そう、少しづつ操縦桿を引いて、引いて、そう、そのまま…」ガクン。

「着陸しちゃったねぇ!」って、初日でしょうが…いや、でも、やっぱり自分で降りられたというのはうれしいもの。さんざんシミュレーターで「感覚がない…」と言っていたのが、実機では如実に衝撃が伝わってくるわけです。「キュッ」とか「トン」とかいうものから「ガシーン」「ドーン」というものまで、着陸の衝撃も千差万別ですが(前者が望ましいのは言うまでもありません)、何よりとりあえず無事に降りられないことには燃料が尽きるまで止まれないので、この着陸には大変な達成感がありました。

■1:30
駐機、エンジンを止め、必要な書類を記入して事務所へ帰り、簡単な説明を受けます。そして、ログブックに今日の飛行を記録します。このログブックこそが自分の成長の証、ライセンスと同様、パイロットの命ともいえる書類です。ここに今日の飛行時間を記入します。

「1:30」。科目「基本4技能。着陸1回」。今日ようやく、自分の手で飛行機を飛ばすことができました。本当に小さな1歩ですが、頭上を飛び去るあの旅客機のパイロットも、爆音を轟かせて空に消えていくあの戦闘機のパイロットも、すべてここから始まったのかと思い、ある種の感慨を覚えずにはいられませんでした。

明日はどんな科目が待ち構えているのかと思うと不安もありましたが、誰もが通った道と思い、決意も新たに初飛行を終えました。

日本でも飛びたい①(必要な要件)

天一郎です。自家用訓練も始まったばかりですが、先日日本の技能証明の書き換えが
終了したばかりなので、訓練編に進む前に書き換えについてお話ししたいと思います。

■書き換えの資格
日本での書き換えには、年3回行われる航空従事者国家試験の学科試験で「法規」の科目に合格する必要があります。既に外国の技能証明を持っている場合は「外免切り替え」資格で法規のみの申請(私はこれに該当しました)、まだ訓練に入っていない、あるいは訓練途中ということで何も技能証明を持っていない場合は、全科目受験を申請して法規合格を目指すことになるそうです。

外免切り替え資格で申請する場合、例えばFAAで実地試験をすると仮免許が発行されますが、学科試験の際はこれで外免切り替えの資格で申請できます。本免許は合格後の技能証明発行申請の段階で必要になります(注:試験前に航空局より通知があり、本免許の提示を求められるそうです。このため、新たにFAAの実地試験に合格したため本免許を試験官に返納してしまった知人が、日本の自家用試験を受ける際に外免切り替え資格で出願しながら通知後も免許を提示できずに試験を拒否され、資格変更もできず試験料も返されなかった、という事例がありましたので、ここに追記して訂正します。2003年11月16日)。私はこれを知らずに次の学科試験まで待ってしまいましたので、FAAの資格で切り替えをご検討される方は留意されるといいでしょう。

日本でも飛びたい②(ログブック記入の諸注意)

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日本の航空法施行規則に定められている自家用操縦士に必要な飛行経験は以下の通りですが、アメリカで訓練する場合は既に必要な要件を満たしているので
特に問題はありません。

●次の飛行を含む40時間以上の飛行時間
-単独飛行10時間
-出発地点から270キロの飛行で、中間で2回以上の生地着陸を
するものを含む5時間以上の単独野外飛行
-夜間での離着陸および航法の実施を含む20時間以上の同乗教育飛行
上の飛行時間を記録するログブックに関する疑問をあちこちでよく見かけます。アメリカなど外国で売っているログブックと日本のログブック(国土交通省航空局監修、となっています)で様式が違い、時間の記録方法などが微妙に異なるためですが、私の例では、アメリカのログブックでまったく問題ありませんでした。

自家用の訓練ではアメリカの物しか持っていませんでしたが、その後は日本のログブックも持参し、双方に記録しています。ただ、お勧めするとすれば、個人的にはアメリカのログブックだけでも用は足りるのではないかと思っています。アメリカのログブックには小型のものが多く、自家用で楽しむうちはそれで十分かつ持ちやすく、様式的にも書き換えの時の柔軟性が高いと思うからです。現地の教官に書いてもらいやすい、という面もあります。その他の国ではどうでしょうか。

時間の記録は、日本では丁寧に「00:00~00:00」と正確な時間を記載した上でさらに正味飛行時間を項目別に記録するところ、アメリカでは1時間30分なら「1.5」のように記録するため、日本での書き換えが念頭にあった私は、訓練初日から「分単位で記録して欲しい」と依頼し、現在に至っています。しかし、日本の地方航空局で聞いたところ、アメリカ式に書かれていてもそれで統一されていればいい、ということでした。技能証明申請時に「航空経歴書」という書類を提出しますが、ここは「~時間~分」となっているので、「.~」に60分をかけます。私のログブックには、「06」「12」「18」…という6の倍数がたくさん並んでいます。

なお、飛行時間はどのように知るかというと…飛行機のエンジンが始動してから停止するまで動き続ける「ホッブメーター(Hobbs meter)」という記録計があり、帰着時の記録から始動前に記録した時間を引いて「1.3」などのように飛行時間を記録することになります。

■単独飛行にも教官のサインを
同乗教育の部分は必ず教官のサインが入りますが、アメリカでは単独飛行の分は教官のサインがないのが慣例になっているようです。アメリカ航空法の「機長の定義」上の理由によるものか、アメリカのログブックではこの単独時間と機長時間は同じ項目で処理されています。ところが、日本では訓練中は単独でも「教育期間中の飛行」ということで、とにかく教官のサインが必要です。したがって、アメリカでの単独訓練の分にも必ず教官からサインをもらっておきます。教官は慣れないので「なぜだ」と聞くかも知れませんが、一言「For license conversion, I need your signature.」と言えばすぐに応じてくれるでしょう。

サインのない項目がある場合…航空局で聞いた話ですが、当該部分のコピーを訓練を受けた教官(スクール)にファックスなどで送り、サインをもらった後でそれをまたファックスなどで送り返してもらう、という方法でもいいそうです。

■行を分けて記入
切り替えにあたってもう一つよく指摘されるのが、複数の飛行場を回る野外飛行(クロスカントリー)や連続離着陸訓練(タッチアンドゴー)の記録の仕方です。

アメリカでは、例えばホノルルを離陸、隣接のカラエロア飛行場でタッチアンドゴー、ホノルルに帰着という訓練をした場合、同じ行に「HNL-JRF-HNL」と書き、そこに離着陸総数をまとめて書きます。しかし、日本の様式では、タッチアンドゴーの回数を明確にするため、「HNL-JRF」「JRF-HNL」のように2行に分け、どちらかの行にタッチアンドゴーによる離着陸を含めることになります。この場合、もう一方の行の離着陸回数は各1回です。

野外飛行も同様の扱いになります。ホノルルを離陸、マウイ、ラナイを経てホノルルへ帰るパターンの場合、アメリカ式では「HNL-OGG-LNY-HNL」として離着陸総数と総飛行時間をまとめて記入しますが、日本の様式では各区間ごとに行を分け、飛行時間も各区間ごとに記入することになります。

今回の切り替えではアメリカ式のまま提出、特に問題にされませんでしたが、それ以降はすべて日本の様式で記入するようにし、教官にもそのように依頼しています。やはり慣れないので、「う~ん、分からん!」と言われましたが、私自身でも時間を記録しておき、2回目以降から協力してもらうように努めました。

■誤記分の修正
細かいことですが、ログブックに修正を加える場合、私の教官は修正テープを使って数字を直したりしていました。特に何とも思っていなかったのですが、あるところで「修正する場合は2本線を引っ張って修正印を押さないとだめ」という話を聞きました。「航空局通達」という文書にもそのような記述があったので一応航空局に確認しましたが、特に問題視されませんでした。

日本でも飛びたい③(試験を受ける)

1047362892[1]さて、試験申請の期間になりました。管轄の地方航空局に書類を持参、または郵送で
提出します。試験日の数週間前に受験票を送ってくるので、その間に試験準備を進めます。

なお、国家試験も技能証明申請も、用紙はそれぞれに必要なセットが市販されています。
前出の「航空経歴書」もこのセットに入っています。私は東京の「鳳文書林」「ホーブン」で購入しました。1セット数百円です。受験票と技能証明の申請に写真が必要になりますので、証明写真も忘れずに用意します。

法規だけの場合は気も楽です。私は日本航空機操縦士協会(JAPA)編集の「新・学科試験スタディガイド」で自家用レベルの問題を見直しました。ほかにも「航空法」(鳳文書林)を購入しましたが、これは試験勉強というより大まかな規則の確認に使っています。各種手続きなどを自分で納得いくまで調べたいという向きにはこのほかにも様々な規則集がありますが、こと自家用学科試験、しかも外免切り替えが目的ならばまったく不要です。試験前日に「スタディガイド」を丸暗記すれば事足りる、という剛の者もいるようですが、私個人はもう少し余裕を持っておくことをお勧めします。

学科試験、法規は20問、時間は40分です。1問2分計算ですが、普通に準備しておけばあっという間に全問終了します。合格が70%ということで、6問まで間違えることができますが、つまらない間違いでまた4ヶ月も待ちたくないので、一応退出許可時間まで繰り返し見直します。そうこうしているうちに退出時間となり、受験者がゴッソリと退出します。法規の時間から入室した受験者が同じくゴッソリとおり、退出した人達もほとんどもう戻ってこない、すなわち外免切り替えの受験者が多かったような印象を受けました。

日本でも飛びたい④(合格から交付まで)

1ヶ月後程度で合格通知が届き、この通知の原本とコピーをそれまでに揃えておいた書類(私の場合はログブックの見開きページをA4サイズに縮小したコピー3枚、FAA技能証明=自分のライセンス=の表裏を現物大のままA4用紙にまとめたコピー1枚を添付)に添えて提出しますが、私は管轄の東京航空局に持参しました。ここでログブックのコピーと経歴書に記載した飛行時間を担当官が照合し、一応OKとなって提出を終了しました。教官のサインが文字通りミミズののたくったようなものばかりだったため、「サインはどれでしょうか」とたびたび聞かれましたが、「見にくくてすいません…」と教官の代わりにわびつつサインを指して確認していきました。通常、ここから3ヶ月程度待つように言われます。

1047363538[1]経歴書には無線通信士の資格や身体検査証明に関する項目もありますが
空欄のままで特に何の指摘もされません。

それから1週間ほど経った後、東京航空局から電話があり、ログブックに不備がある
ということで出頭しました。ちょうどシミュレーターの体験訓練をした部分が42分あり、これは日本の規定では含むことができないというので訂正してほしい、ということでした。一応訂正に応じましたが、この部分はアメリカでは通常の訓練に加算できる項目です。そのような場合は、経歴書にこの部分を除いた時間を記載し、ログブックのコピー部分に「この部分は含まず」などの注意書きを記しておくなどの方法でも良かったそうです。

■交付!
それから1ヶ月弱後、国土交通省航空局から免許交付の通知が来ました。ここで免許登録税を納付して郵送、または直接受け取りになるので、即日納付して受け取りに東京航空局へ行ったところ、「すいません、見当たらないので…見つかり次第郵送するということでよろしいでしょうか…」という返事。どうしもしようがないので、郵送してもらうことにしました。数日後に送ってきた技能証明に添えられた担当官のおわびの手紙によると、別の所へ送られていたとのこと。まぁ急がないので何も言いませんが…。

届いた技能証明、淡い紫色の背景に偽造防止模様が入ったかなり念入りな作りで、写真にエンボスマークが入り、なかなかカッコいいと思い個人的にはとても気に入ってます。限定事項(陸上単発)は、2枚目の紙があり、そちらに技能証明番号と一緒に記載されています。

長々と書いてみましたが、流布している「通説」よりすんなり日本の技能証明を手にすることができたと思います。担当官の方が親切だったのも良かったですが、やはりいろいろな通説は当局に直接確認するに限る、と思ったものでした。

実際に日本で乗るまでには、このほかに無線の免許に身体検査証明、さらに相当のお金も必要ですが、せっかく取得した日本の技能証明も何かの機会に活用したいと思っています。

とことんハードに

さて、訓練2日目。この日からしばらくは軍出身の鬼軍曹が担当教官になります。スクールで最も経験豊かな教官の1人で、気のいい面白い人ですが、ひとたび車輪が地面を離れた瞬間から着陸してエンジンを止めるまでは一切妥協のないスパルタンな訓練でも知られました。あまりの厳格さにめげそうになったこともありますが、訓練生である私を確実にサポートしてくれたことに変わりはなく、時に非常に頼もしく、今でも教訓にしていることなど、後につながることをいろいろ叩き込まれました。

スパルタンな訓練はエンジン始動後の誘導路の走行から始まります。少しでも線をそれると「線の上だ!」少しカーブしたところを曲がり損ねると「自分が機体を扱える速さで走れ!」。離陸直後は「ラダー(方向舵ペダル)!ボール(滑り計)は真ん中!」「上昇率!」「速度!」「翼は水平!」。水平飛行中に50フィート(15メートル)程度上下しようものなら「高度計!」「翼は水平!」「(エンジンの)回転計!」そして、また「方向舵!」…。

1047380518[1]訓練が進んで参ったのは、姿勢指示計(AI)の針が1ミリにもならない程度上下していたのを見て「水平に!」と言われ続けたことです。とは言え、実はこれが非常に重要な習慣で、確かにこのわずかなズレを放置しておくと機体は自分の意図するルートから徐々にずれていってしまいます。特に高度を変える時、どのくらいの割合で上昇・降下するかということは高度計下の昇降計を見て参考にしますが、実際の操作からこの指示が安定するまで若干の時間差があり、この時間差なく、例えば「毎分500フィート」の上昇・降下率で高度を変えるには、正面にあるAIで上下にどのくらいの角度で飛ぶと希望する上昇・降下率が得られるかを知り、次いで昇降計で実際の数値を確認する、という手順を訓練の段階で体得できるようにします。後の計器飛行証明の訓練にも関わってきますが、上下に5度程度姿勢を変えるだけで見た目にはかなり急角度で飛行している感覚があるので、慣れてくるとこの1ミリ程度のずれが自分でも気になるようになります。

きっちり飛び、落ちる

初期の訓練は、ひたすら上昇・降下・旋回の練習が続きました。バリエーションとしては上昇・降下しながらの旋回、さらには指定の方位まで旋回し終わると同時に指定高度まで上昇・降下して水平飛行するなどの科目が加わっていきますが、このような指示は段階を追って細かく、複雑になっていきます。

旋回は、左右に30度程度翼を傾けて行うのが通常の旋回ですが、この傾きをさらに45-60度まで増やす急旋回も行います。上向きの揚力が減り高度が落ちるので、翼の傾きが増えるにつれて操縦桿を引き、高度が落ちないように支える必要があります。旋回すると多少なりとも高度が落ちるので、これを同じ高度のまま安定して行えるようになるまで繰り返します。

これに失速(ストール)の訓練が続きます。これはエンジンを最小まで絞って行う「パワーオフ・ストール」と、エンジンを最大出力にして行う「パワーオン・ストール」の2種類ありますが、いずれも機首を限界まで上げて速度を落とし、これ以上機体が浮いていられない状態を作り出します。「パワーオフ」は着陸進入を想定したもので、別名「アプローチ・ランディングストール」、「オン」は最大出力を出す離陸時を想定するため「デパーチャー・ストール」とも呼ばれますが、いずれにしても浮力が消えた状態から素早く回復し、墜落の危険性を回避することを目的とした訓練です。

1047380619[1]■「絶叫」体験も
失速訓練のポイントは引き過ぎた操縦桿を戻して機首を下げるところにありますが、ここで注意点が1つ。「操縦桿を戻す」というポイントを念頭に操縦桿を「押して」回復するという記述がありますが、この通りに操作するとちょっとした絶叫マシン体験をすることになります。実際に私がやってしまったのですが、パワーオフの時に操縦桿を引き続け、失速警報の「プー」というブザーが続いた後に「ストーン」と機首が落ちたので、何かで読んだ通りに操縦桿を数センチ押したところ、何と目の前に本来見えるはずのない地表が見え、ジェットコースターの最高部から落下する時のような薄気味悪いマイナスGを感じました。横の鬼軍曹から「操縦桿を押すな!バックプレッシャー(引いている力)を緩めるだけだ!いいか、絶・対・に・押すな!」とキツいお達しがあったのは言うまでもありません。

パワーオンでは操縦桿を緩めて所定の落差の範囲内で速度の回復を待って上昇を継続、パワーオフでは落下と同時にエンジンを最大出力に上げて高度を維持しますが、いずれの失速でも機首が横に首を振るので、方向舵を踏んでこれを抑える操作が加わります。首振りを抑える操作は必ず方向舵で行います。操縦桿で修正しようとすると、左右の翼の揚力バランスがさらに狂い、恐ろしい「きりもみ(スピン)」に入ることになります。私は実際の経験はなく、上級者の訓練ではわざとスピンに入って回復する訓練もあるそうですが、中には回復不能のスピンというのがあるそうで、初心者があわてて操作するとそうした回復不能なスピンに入る可能性もあります。足はなかなか意識が向かないので、特に集中して使えるように練習する必要を感じました。

■フラフラになっても飛ぶ
基本空中操作にはもう一つ、低速飛行があります。着陸進入の形態で失速に近い速度で左右に旋回しますが、この速度域では大きい操作ができず、旋回も非常に緩慢なものになります。高度を変えずに実施するのが大変で、特に神経を使う科目でもありました。

タッチアンドゴー

1049816936[1]一通り基本操作を訓練すると、今度は場周経路(トラフィックパターン)を回る連続離着陸訓練(タッチアンドゴー)で各種離着陸操作を行います。滑走路を1辺とする長方形の場周(レーストラックという呼び方もあるそうです)を決められた手順で飛びますが、C172で約6分/周の間にすることがいろいろあるので、マゴマゴしていると鬼軍曹から「次!」と言われます。

離着陸訓練では、短い滑走路を想定した短距離離着陸と、荒れ地または雪面などを想定した不整地離着陸などを含む課目を練習しますが、それぞれの詳細は省略。トラフィックパターンを離陸してから再度着陸するまで平均して約6分、その間にすべきこと、そして情け容赦なく飛んでくる鬼軍曹のお言葉を思いつくまま書いてみようと思います。

■6分間の中身
いつものように離陸、指定の上昇速度を維持しながら400-500フィートまで上昇して左旋回(右の場合もあり)、滑走路と直角をなす方位(クロスウィンドレグ)でそのまま上昇、しばらく飛んだ後にもう一度左旋回して滑走路と平行に反対方位(ダウンウィンドレグ)へ飛びますが、その辺りでパターン指定の高度(地上800フィート前後)に到達するので、水平飛行に移ります。

クロスウィンドからダウンウィンドまでの間に徐々に忙しい時間になります。高度計の確認、見張り、スロットル調整、チェックリスト実施…その間に当然交信もこなします。こうして書いてみると「大したことないじゃん」と自分でも思いますが、やっている最中は、とりあえず水平飛行に入ったら一息つけたいもの。ところが数分後には降りなければならないので、それも許されないわけです。ちょっとでも気を許すと、鬼軍曹の「何をしてる!」という一喝が来ます。

まったく容赦ありません。ダウンウィンドへの旋回が終わるとすぐ「チェックリスト!」その後、着陸滑走路の中間点(ミッドフィールド)に来るとスロットルを絞って減速しますが、チェックリストに手間取ったりちょうど管制塔から呼ばれたりしてその操作を失念すると「ミッドフィールド!」スロットルを絞ると機首が下がるので、それを支えるためにトリム(昇降舵の釣り合い)を取って高度を維持しつつ速度を下げますが、ちょっと高度計がふらつくと「高度計を見ろ!」そうこうしている内にフラップ(下げ翼)を下げ始める滑走路の末端の横を通過しますが、同様に手間取ってると「フラップ!」フラップを下げると機首が若干上がるので再度トリムを取りますが、これにもたついて高度計がふらつくと「高度計!上がるな、下がるな!」

滑走路末端が左斜め後45度に見えたら再度左旋回、滑走路と再度直角をなす方位(ベースレグ)に飛び、降下を始めますが、ここでうっかりすると指定の進入速度をオーバーします。すると、今度は「速度計!」と来ます。そして、滑走路に正対するファイナルレグへの左旋回。旋回開始位置かと思って旋回を始めると「まだ早い!ちゃんと決まったラインに沿って飛べ!」最初はそれが分からないので旋回が早かったり遅かったりするわけですが…あとはその時の風向きや風力によっても変わってくるでしょう。いずれにしてもファイナルレグに乗って進入することになっているので、それが出来ない内はいろいろ言われるのも仕方ないところですが、まったく容赦なく攻め立ててくれます…。

降下を続け、滑走路にたどり着けると確信を得たら徐々にスロットルを絞り、末端通過までには完全に絞り切ります。その後は接地直前までに機首上げ、左右の微調整などが入りますが、目標はスムーズな接地。本来はここで決まった速度の範囲、接地姿勢などの「型」ができていなければなりませんが、初心者はいろいろな要件が重なって「ドシーン」「ガシャーン」と降ります。私も例外ではありませんでした。ここでも当然お小言をもらいますが、正確に何を言われたか忘れてしまいました…こうした訓練を来る日も来る日も繰り返すことになります。

ソロ、行くよ

1049817153[1]単独飛行、野外飛行に出るまでに、自家用操縦士として必要な技術は一通り習っておくことになっています。訓練では、計器のみを参照する計器飛行、異常姿勢からの回復、地上目標を参照して飛ぶ操作、非常時操作なども適宜繰り返し、技能の定着を図ります。

これらを一通り習った後、進度チェックのため初日に担当したマイルドな教官に交代し
しごきの成果を見てもらうことになりました。

■「もうすぐ何かが…」
始動前点検、エンジン始動、地上走行、離陸上昇、水平飛行、各種空中操作、連続離着陸…教官いわく「いやぁ、2人してよく頑張ったねぇ、すごい上達ぶりだよ」。お、確かに上達してるな、と思い、少々うれしくなりました。

すると、トラフィックパターンを回っている最中に「うぅん、このまま行くともうすぐ“何か”があるかもしれないよ」と言うではありませんか。もちろん「単独飛行」のことです。

鬼軍曹との飛行で毎回毎回めげつつも気合いを入れ直し、軍曹の口が開く回数を減らすことにひたすら集中してきたので、もはや独りで飛ぶことに何の不安もありませんでしたが、「その時」に備え、それ以降はこれまでの復習と位置づけてさらに念入りに飛ぶことにしました。

■単独!
タッチアンドゴーの訓練はホノルル空港の隣にあるカラエロア飛行場(旧バーバースポイント米海軍基地)で行います。そのカラエロアでマイルドな教官の指導で各種離着陸操作を実施していたある時、ダウンウィンドレグを飛んでいると「次は降りたらフルストップ(完全停止)、管制塔までの走行をリクエストして。ソロ(単独)、行くよ」。いよいよ自力で飛ぶ日が来ました。

着陸、管制塔下まで走行して停止、「いつも通りゆっくりやればいいからね」という教官を降ろし、この後約20分、誰も助けてくれる人はいません。

管制塔と交信、滑走路端まで走行しながらいつも通りチェックを進め、指定位置で停止、最後の確認をします。着陸前に教官が「訓練生のソロに入ります」と管制塔に言ってくれていたかどうか忘れましたが、管制塔からは特にこれといった言葉もなかったでしょうか。

いよいよ行きます、「Ready for take off 離陸準備よし」。「Cleared for take off 離陸どうぞ」。窓、トランスポンダー(レーダー識別装置)、ストロボライト(閃光灯)に目を走らせ、右手でスロットルを一杯に押し込み、滑走開始。20ノット、40ノット、55ノット…操縦桿を引いて離陸。ペダルを踏んで直進、左旋回、上昇、左旋回、水平飛行…さんざん叩き込まれた操作、我ながら落ち着いています。減速、フラップ下げ、降下…「Cleared for touch-and-go タッチアンドゴーどうぞ」ここでしっかりと降りられれば一段落、自分で「速度計!」と思いながら降りていきます。

近づく末端、「行ける…」。スロットルを絞り、末端通過とともにアイドル、機首上げ操作、そして「ドン」と接地。まだまだおぼつかないものの、そうそう悪くない接地だったかなと自己評価。これをあと2回繰り返すべく、フラップを上げ、スロットルを再び一杯に押し込んで離陸します。

連続離着陸3回終了。フルストップを要求し、教官が待つ管制塔下まで進みます。「訓練生とは思えない飛び方だったよ」という教官のお褒めの言葉もうれしく思うと同時に、この程度で有頂天になってはイカンと自制することも忘れることはできません。訓練はまだ始まったばかり、免許を手にするまではどんなに褒めてもらってもライセンサーにあらず…記念すべき単独飛行にそれほどの感慨が湧かなかったのも、日頃のスパルタンな訓練の成果だったのでしょうか…ともあれ、これでいよいよ他の島へ飛ぶ訓練に移ります。

島間飛行

1051705575[1]単独飛行を終え、いよいよ離陸・巡航・着陸と自分で決めたルートをたどるクロスカントリー(野外飛行)の訓練に移ります。これまでの練習と異なり、主に飛行機を飛ばすための各種規則に沿った飛行を徹底させるための訓練になります。ここまでに学科を終わらせておくと既にいろいろな知識が頭に入っているのでとても楽ですが、飛行計画の作成、あらかじめ入手した気象データに基づく航法記録(ナビゲーションログ)の作成、飛行機の重心位置など、飛行機に向かう前にすべて済ませておきます。

■離陸後、右旋回
いつもは離陸後、訓練空域へ向かうために左に旋回しますが、今回は右旋回し、ホノルル市上空からココヘッドへ抜けて洋上に出ます。ココヘッドを抜けるまではホノルル空港の出発・進入管制のレーダーが監視しており、あらかじめ示されている出発方法に従います。今日も鬼軍曹が右席に乗って「計算した方位は何度だ?それに合わせて飛べ!」と厳しくチェックを入れてくれます。この区間、左側の山から吹いてくる風のため激しく揺れ、方位の維持もなかなか大変です…。

■洋上へ
ココヘッドを通過する辺りで、管制官が「レーダーサービス終了、識別番号を有視界用に、周波数変更どうぞ」と言ってきます。ここで、ホノルルレディオという、飛行計画を提出した事務所との無線交信を始めます。この時点では飛行計画はまだ有効になっていないので、レディオに「飛行計画を開いてください Activate my flight plan」と要請します。

訓練が始まってこんなに激しい動きのない飛行があっただろうか、というくらい穏やかな飛行でしたが、それでも訓練、洋上ということもあり、方位には気をつけます。目の前のジャイロコンパスに方位の印(バグ)をセットしておきますが、ちょっとずれると「バグの通りに飛べ Fly the bug」と早速修正されます。このジャイロ、時間が経つと少しづつ狂ってくるので、15分を目安に磁気コンパスと比較して直さないといけませんが、細かい作業がいくつかあると失念してしまい、バグの通りに飛んでいてもあらぬ方向へ飛んでいってしまう可能性もないではありません。確認用に無線標識も使い、途中で島も見えるので、現実には起こりにくいことではあると思いますが…。

■最終進入前の上昇
目的地はラナイ島、接地帯の標高が1300フィートなので、飛行場の場周経路に入るため、これまでの巡航高度1500フィートから2500フィートまで上昇します。切り立ったがけが見えた辺りで、レディオに「しばらく周波数を離れる」と通報し、滑走路を左に見ながら直角のコースに進入、降下していきます。ちょうどがけから陸地に入るところで激しい突風が吹き、コースに乗せるのも一苦労です。

左旋回して滑走路に正対、接地直前まで強めの横風が吹き、数日前に習った横風修正の方法を使って接地…という落ち着いた考えもなく、必死に操縦桿と方向舵を操作して「ドシン!」そのまま離陸操作に移り、数回のタッチアンドゴーを繰り返してからまたホノルルに帰りました。

何とか初の洋上飛行をこなして無事に帰りましたが、その日の午後、いつものカラエロア飛行場で鬼教官の厳しい指導が続いたことは言うまでもありません…。

風に揺られ、道に迷い

1052045051[1]野外飛行は同乗3時間、単独5時間をこなすことになっています。
私はホノルルからマウイ島へ飛び帰りにラナイ島を経由してホノルルへ戻ったのが
最長距離でしたが、ここでは同乗・単独の中から印象深かった体験を2、3ご紹介します。

■滑走路どこ?
ホノルルを離陸してモロカイ島の北側を通過してマウイ島へ進入するのがよくある
パターン、マウイ・カフルイ空港は進入管制と空域進入前に交信を済ませておく
「クラスC」空域で、大型機の発着もある空港です。巡航高度の1500フィートで進入しますが、携行した航空図の方角を見ても、何かの町並みは見えるものの、滑走路らしきものが見当たりません。

同乗した鬼軍曹が「見えるか?」というので「チャート(航空図)にある湾はあるけど…」と言うと、「もう少し左に機首を向けて飛べ。見えにくいが、あそこに確かにある!」と確信に満ちた口調で言うので、しばらく半信半疑で飛んでいました。

すると、パラセーリング中の人々が見え始めた沿岸数カイリの所でようやく空港全景が確認でき、いつものように滑走路を左前に見ながら直角のコースへ入るべく降下していきました。

■何だこの風は…!
このコースでマウイへ進入すると、着陸滑走路は5番(磁方位050)になります。左旋回して滑走路に正対し、あるところまでは順調に降下していきますが、接地直前の垣根(実際に何かは不明)を越えると突如として風、しかも横風が強くなり、いい感じで直進していた感覚を見事に裏切ってくれます。

すかさず横風対策に移りますが、接地まで余り時間もなく、せいぜい直進を保つのが精一杯。落着は免れたものの、接地後にあおられそうになり、転覆の恐怖が脳裏をよぎりました。

マウイを再び離陸すると、すぐに指定方位へ右旋回して上昇を途中で止めるよう指示されます。ちょうど大型機が北から進入するために上空を通過するためですが、その間の揺れること揺れること…大型機と遭遇すると、管制官から必ず「後方乱流に留意するように Caution wake turbulence」と言われますが、その前から風に吹かれ放題。「木の葉のように」と形容されますが、ヘッドセットがずれる音なのでしょうか、かすかに「シュコーン」という空気漏れの音がするたびに速度計と高度計の針が微妙に変化するため、特に低高度を飛行中は気が気ではありません。

■すいません、コース間違えました…
そのうち上昇を許可され、クラスC空域も離れます。この頃には風も穏やかになり、眼下の海に目をやる余裕も出てきます。計器を次の目的地ラナイ島の無線標識に設定、ホノルルレディオと交信して到着予定時間を通報します。

少し右旋回すると、大きめの島が目に入ってくるので、それを目指して飛行を続けました。マウイ島から意外と近い感じです。下には人気のダイビングスポットという、三日月の形をしたきれいな島が見えています。さて、そろそろ目的地。高度を上げて、レディオにも通報して…。

ところが、どうも様子が変です。切り立った崖が見当たらず、妙に雲が多く、赤茶けた大地ばかりで、しかもいつもの場所に飛行場がない…島を1周してしまいましたが、そんなに簡単に1周できる島ではありません。そう思い、もう一度計器をよーく見てみると「ラナイは西へ30カイリ」とあります。やってしまいました…機位喪失(ロストポジション)です。

あらためて計器を設定、針が真ん中に来るように、そしてその方角に飛ぶように機首を合わせ、レディオに「位置を間違えました。現在ラナイの南東30カイリ、所要時間約20分」と訂正を入れました。

間違えたのはカフラウェ島、軍の実弾演習が行われる所で、爆弾の投下目標などが置いてあるそうです。ノータムでもたまに「カフラウェで実弾演習あり。沿岸から2マイル、高度5000フィート以下は進入しないように」と通知されていることがあります。その日は特に何も聞いていませんでしたが、我ながら無事で良かった…。

闇夜の洋上飛行

1052045837[1]自家用パイロットになるには、同乗による夜間飛行3時間、うち100カイリ以上の野外飛行を行います。私はラナイ島を往復してきました。夜の洋上飛行です。

■空間識失調の恐怖
ホノルルを離陸して右旋回すると、しばらくは街の灯りを頼りに飛ぶことができますが、そのうち灯りも少なくなり、漆黒の闇が広がる洋上に出るまではそれから
10分少々しかかかりません。

一応気象条件は有視界なものの、真っ暗闇(教官連は pitch black と表現します)では、計器が頼り。訓練では基本的な計器飛行の練習も行うことになっているので、このような場合、方位、高度、速度は計器を見ますが、そうした環境で強風が吹き荒れると、あっという間に自分の中にあったはずの「軸」が傾き、計器表示と感覚が異なってくるため、途端に不安に襲われます。

感覚がずれたこの状態はすでに空間識失調(バーティゴ)と呼ばれる状態に入っていますが、この段階でも計器を信頼してそれに従っている間は大きな問題にはなりません。ところが、あくまで自分の三半規管に頼りたくなるのが人情、ずれを修正しようとしている内に失速、横転、急降下に入ることは十分ありえます。特に風向・風速が急に変化している場合などはなおさらです。この日は特にホノルル付近の風が強く、穏やかならざる心境で闇夜へ突入しました。

■あおられる…!
洋上は大体穏やかで、この日もほぼ落ち着いた風でしたが、突風が吹くこともあり、若干傾く時もありました。

当時の私は左に傾いたら右へ戻そうとする、あるいはその逆を行おうとする「オーバーコントロール」の癖があると言われ、恐怖が倍増していたこの夜もいつもと同様、あるいはそれ以上に過敏に修正しようと試みていました。鬼軍曹から「操縦桿を固定して、翼を水平にしておくんだ」と言われていましたが、この夜は特に強風(があったと思った)のため、あおられると思い「うぉう!」などと言いながら飛んでいたような気がします。

■「おととい来やがれ」
ラナイ島へ近づくと、無線を通報用周波数に合わせ、マイクのスイッチを7回押して滑走路灯を点灯します。ここで1回着陸してまたホノルルへ向かいました。

西に機首を向けると、いつも風の強いこの周辺の風速がさらに強く感じられます。懸命に立て直そうとしますが、その内に、声が「うぉう」から「うわぁ」へ変わってきてしまいました。不覚…。

すると、見かねた鬼軍曹が「今日はちょっと風が強いかもしれんな、俺が代わろう」と言って、操縦を引き継いでくれました。機体は相変わらず激しく揺れていますが、鬼軍曹は計器を見ながら落ち着いて機体を操ります。マウイからラナイへ向かう道中の強風にも「ロックンロール、ベイベー」と完全に揺れを満喫していた鬼軍曹が操縦すること約10分、とりあえず揺れも落ち着き、軍曹が後を振り返って一言、「おととい来やがれ」…。

いやぁ、いつかこんな決めゼリフを吐いてみたいと思ったものでした。実は、そんなセリフこそ吐かなかったものの、そう口にできる技術を身に着ける時機は意外と早くやってくるのですが、それはまた別の機会に…ともあれ、その後は再び訓練生の私が操縦し、ホノルルの灯りに向かって飛行を続けました。

ATC教訓あれこれ

1052134057[1]ホノルルはクラスB空域ということもあり、管制官との交信は避けて通れませんが、おかげでいろいろな場面に遭遇し、かつありがたい教訓を得られることもあります。

■管制官の言うことは聞くな…?
管制サービスを受けている飛行機が管制官の指示に従うのは、航空交通安全の大前提と教育され、今日もその前提の下に世界中で飛行機が飛び交っています。一方で、飛行機の安全の最終責任者は機長(Pilot In Command)であり、そのように規定され、訓練生もそう行動するように教育されます。

訓練も仕上げの段階に来たある日、マイルドな教官の同乗でホノルル空港の4L滑走路に着陸、滑走中に管制塔からいつもの「E誘導路から離脱せよ」という指示がありました。そのつもりで減速、平行する4R滑走路へ向かうべく右折しようとすると、マイルド教官が「ん、ちょっと待とう」と言って管制塔に何やら聞いています。管制官が質問の繰り返しを要求している間に滑走路の向こう側を見ると、ハンガーの並びにある貨物大手のスポットからジャンボがプッシュバック、まさにエンジンをかけようとしているところでした。

セスナ機(C152)がジェット噴流の真後ろに入ってしまい、まっ逆さまにひっくり返ったことがあったという話を、数日前にマイルド教官から聞いたばかり。私の機が指示通りに進めば、噴流どころではなく「直噴」のあおりを受け、爆撃後のような無残な姿をさらすことは明らか過ぎるほど明らかでした。管制官はどこを見ていたのか…。

交信後、4R滑走路をしばらく下ったところにある「P誘導路」からハンガーに戻ることになりましたが、苦笑しながら語ってくれたマイルド教官の教訓…「管制官の言うことは聞くな。パイロットが間違えればパイロットが死ぬ。管制官が間違えてもパイロットが死ぬんだから」。疑問に思ったことはすぐ確認する、安全はパイロットと管制官の共同作業の成果、ということでしょうか。

■管制の仕事はサービス
鬼軍曹と野外飛行に出た時のこと。ココヘッドを通過する辺りは厳密にはまだクラスB空域ですが、通常はその辺りで「レーダーサービス終了」となり、別の周波数に変えます。しかし、その日の管制官は生真面目だったのか、ココヘッド上空でも何も言わなかったので、鬼軍曹の指示で「周波数を変えていいですか」と聞くと「ダメです。まだクラスB空域です。しかも少々高度が狂ってませんか」と言います。確かに100フィート程度ずれていたのは未熟でしたが、問題視するならもっと早く言ってもいいところです。行きは洋上に出てしばらくしてから「サービス終了」となりました。

帰り、有視界機はクラスB空域に入る前に進入管制と連絡をとり、レーダー識別番号をもらいます。呼び出すと、「レーダー識別番号●●●●。また低いね」同じ管制官です。どういう心境だったのか、やたら高度に厳しい管制官(そうあるべきではありますが、程度問題です)で、「おたくは行きも高度がおかしくて、帰りも低い。どうなってるんだ」という主旨のことを言い出したため、鬼軍曹がたまらず「行きのクラスBはもっと早くリリース(周波数変更を認める)する、しかも帰りはもっと早くレーダーサービスを始めるのが慣例的な手順じゃないのか。どうなってるんだ」と言い出してから双方で言葉の応酬となり、降りてから管制塔(進入管制が置かれています)に電話するように言われていました。ホノルル上空に差し掛かって軍曹曰く「管制官はサービスするためにいるんであって、指図するためにいるんじゃない」。

着陸後に管制塔に電話した鬼軍曹、先方の監督者と何やら和やかに言葉を交わして数分で電話を切ってしまいましたが、もしかしたらよくあることだったのかもしれません…。

■強気に出た…が
そんなことがあった後、単独で訓練に出てからホノルルに戻り、着陸許可を受けてから滑走路に正対しようと左旋回をしたところ、「ダウンウィンドレグを延長するように」との指示。正反対の方向へ旋回しようとしている人間にそんな指示はないだろうと思い、いい形で降りてもいたので、教官の「教訓」に従って堂々と「Negative」と進入続行の意思を示したところ、「ダ・ウ・ン・ウィ・ン・ド・を・延・長・す・る・こ・と。右旋回するように。ベースターンは追って指示します」と言われてしまいました。間隔設定などで必要な場合はこういう指示もあるにはあるので、そういう状況だったのでしょう。これはちょっとフライング気味でしたが、トラブルを恐れずに聞くべきことは聞くというスタンスは大事ではあります…。

風が読めない…

実地試験を受ける前に、単独飛行前に行った、地上目標を参照し1052134173[1]ながら行う操縦と緊急事態を想定した訓練を再復習しなければなりません。いずれも風向の判定が重要な要素になりますが、漫然と飛んでいたわけではないものの、どうも風を読むのが苦手で、かなり苦労させられました。

■風を知るには
自家用の実地試験で行われる「地上目標参照飛行」には、道路など、直線の目標を挟んでS字を描く「S字旋回」と、1点を目標にしてその周囲に円を描く「ターン・アラウンド・ア・ポイント」(アラウンド・パイロン)があります。風向を読んで傾きの深さを調節するなど、「所定の航跡を得るためにバランスのいい操縦を行う」ことが訓練の目的とされていますが、それにはおおまかに風向をつかんでおくことが必要です。

風を知るには、付近に煙があればその流れる方向を見る、大きな池などがあればさざ波が立っている方向を見る、直角をなす任意の2方向に飛んで機体の流され方から風向を判定する、あるいは近隣の飛行場に測定値を聞く、などの方法があります。このように書いてみると、自分でも「簡単だな」と思いますが、なぜか上空に上がると難しい…四六時中風に揺られて「どこから吹いていようが知らん、とにかく風が強い!」と無意識にさじを投げていた部分もないことはありませんでしたが、方向別のちょっとした速度の変化に鈍感だった、ということは言えるかもしれません。

■エンジン停止、その時…
エンジン停止を中心とした緊急事態の訓練は、空中に上がる前にその課目を行う旨、教官から指示されます。機内で使用するチェックリストにも緊急用の項目があり、実際にそれを使用することになりますが、初期操作は事態発生と同時に行うので、地上にいる間にあらかじめ手順を確認しておきます。

空中操作の訓練中、教官がおもむろにスロットルを絞るのが緊急訓練の合図。機首を上下して無動力で最も長く滑空できる速度に合わせ、エンジン再始動の操作を模擬しつつ、再始動を断念したことを想定して素早く適当な不時着地を探します。

ここでも風を読んでおくことが大事なのですが、どうしても後手後手に回ってしまいます。地上の物件に被害を与えずに降りるという条件もあるので、どうしようもない場合は風向を無視して降りることになりますが、離着陸は向かい風で、というのが基本なので、本来はいろいろな課目を忙しくこなしつつ風を読み、常に適当な不時着点について考えておくのがパイロットの務め…と言われるものの、未熟者故、まだ自分のものにできているとは言えません。これからも頑張ります…。

忘れてた…

1052803403[1]実地試験では、実際に飛ぶ前に試験官との口頭試問があります。学科試験で問われる内容のほか、飛ぶ機体の仕様、事前に指示された野外飛行の飛行計画、重量配分、当日の気象データなどについて聞かれますが、飛行訓練に没頭していた私は教官から口頭試問の準備について聞かれた際にすっかり失念しており、あわてて別の教官に講習をやってもらうことになりました。

■こんな飛行はできるか否か
講習は、地上教官の経験が豊富だという、サッカーのドイツ代表で知られるオリバー・カーン似の教官にやってもらうことになりました。試験官の「傾向と対策」に通じているというカーン教官のマンツーマンの講習で、試験の勘所を次々と覚えていきます。「飛ばす機体のエンジンについて教えてください」「ライカミング●●●、水平対向型4気筒、空冷、直結、180馬力…」「オイルの量は?」「燃料の種類、搭載量は?」「AIRMET、METAR、SIGMETって?」などなど。

こんな質問がありました。
「君がマウイ島へ飛ぶとする。その時お隣さんが“お、俺も乗せてってくれ”
と言ったとする。その時、このお隣さんがそのままマウイへ君にくっついていく場合、または“ラナイへ寄ってくれ”と言った場合、自家用パイロットとして飛べるか否か。両方について答えるように」。
さぁ、どうでしょう。

■あわてる前に
講習では、身体検査など自家用操縦士の資格要件、行う業務範囲などのほか、機体の整備に関わる規定、飛行途中に不具合が起きた場合の特例措置などに重点が置かれました。また、気象データ、計器の構造、飛行に伴う人体の変化、航空図を利用しての各種規則、航空図の読み方の復習など、安全・正確に飛行機を飛ばすために必要とされる知識について広くさらいました。

学科試験はいろいろな試験問題集などで準備できますが、口頭試問も類似の試験本があるので、自習は可能です。この本は小型なので、簡単な参考書としても使えるでしょう。口頭試問はもちろん英語で行われるので、知識として分かっていることを自分の口で英語で説明できるよう早めに準備しておくと、直前にあわてなくていいと思います。

ようやく実地試験に

いよいよ実地試験の日がやってきました。当初、FAA公認試験官の日程に空きがなく、FAAの試験官(FAA職員。公認試験官とは別物)にやってもらおうかという話もありましたが、当時いらしていた Runway さんのご尽力もあって公認試験官の日程を確保してもらい、とりあえず無事に試験を受けられることになりました。

■飛べるのか??
ところが、そういう日に限って風が強く、雲も低くたちこめていました。「飛べるんだろうか…」という不安を抱えつつ、気象情報を取りにFSS(レディオ)へ出かけました。

事前に試験官からもらっていたルートを告げ、通信官に気象状況の説明を受け、「今日試験なんですよ」というと「止めといた方がいいんじゃないの?」という返事。気象データの予想には、有視界がギリギリ可能な気象条件であることを示す「MVFR」(マージナルVFR)の文字が並びます。実際に野外飛行に出るときは絶対にIFRで出なければ危険でしょう。

航法ログを作成するためにスクールに帰った時も、強い風はまだ止みません。

■金が…
訓練中の料金などはすべてクレジットカード支払いだったので、すっかり失念していましたが、試験官に試験料を納めるのを忘れてはなりません。直接本人に渡すので、これは私の知る限り必ず小切手か現金で納付することになります。これをすっかり忘れており、ログ作成前の仕事は近くのガソリンスタンドにあるATMでお金を下すことになってしまいました。

試験にはこのほか、必ず提出する書類、携行する規定類などがあるので、事前に確認、準備しておきます。特に計器飛行で使う視界制限用バイザーは忘れがちなので、確保しておきましょう。

■訓練で使った本も忘れずに
試験官はあらゆることを聞いてきます。何も見ずにスラスラ答えられれば満点ですが、必ずしも細かいところまで覚えきれないこともあるでしょう。また、実際にはどんなに経験を積んでも必ず「答案」を見て数値や規定などを確認することになります。

答えに窮した場合、「試験本」を見て答えるのも可能です。もっとも、すぐに当該箇所を開ける程度の知識を持っておくのは大事なので、あくまでも細かい事柄の参照用程度に考えておいた方がいいでしょう。でも、全部完全に覚えなければならないというのではないので、いく分気が楽かもしれません。その余裕でかえって記憶力が高まる、という逆の効果もある…かもしれません。

1054197726[1]

口頭試問

1054197621[1]スクールで座学に使われる部屋があり、実地試験がある場合はここで試験官と口頭試問を行います。ログの作成もここで行いますが、静か過ぎるのも落ち着かず、わざわざ人でにぎわっているラウンジで気をまぎらせながらログ作成を続けました。

■ルートを逆に…
タイプライターを手に提げた試験官がやってきました。超ベテランの日系人の試験官で、日本語も普通に話せるそうですが、私はついに話してもらったことがありません。ただ、本当に普通の日本人のような風貌なので、それだけで何となく気が落ち着くような気がします。

書類の確認をして、早速口頭試問に入ります…が、試験官が「ん?」とログにチェックを入れます。「ルート逆だね」。出発のところ、別の出発点からホノルルへのログを作ってしまいました。風の影響などを計算しなおし、あわてて逆ルートのログを作成し直します。

■自家用パイロットとしては
仕切りなおし。身体検査証明の有効期限、住所変更時の手続き、そして、自家用操縦士として飛べる操作範囲などなど。

以前出てきた「マウイまで飛ぶ時に声をかけてきたお隣さん」を乗せてそのままマウイへ行く場合、ラナイ島へ行く場合、という質問はここで出ました。正解は、マウイへはOK、ラナイへはXです。日本の航空法では「報酬を受けないで無償の運航を行う」という規定があり、FAR(米航空法)では「Not for compensation or hire」と規定されています。要点は、自分の意図する飛行(この場合はマウイ行き)に反する飛行(ラナイ行き)が、FARのいう「hire」に相当するということで、Xとなります。

では、上の問題をクリアした後、お隣さんが「いやぁ、今日は楽しかった。お礼の意味でおごるよ」と言った場合、受けられるかどうか。「報酬」に当たるということでXですが、このあたりは、教官も「微妙だよね」と言っていました。別の話では「ものの言い方一つだろう」というのもありましたが…。

■クロスカントリーは…
質問は、本日飛ばす機体、航空力学、気象サービスなどなどへ続いていきます。気象データを説明しながら、先ほど作成した航法ログ、そして野外飛行の飛行計画そのものについて検討しました。

やはり「MVFR」が焦点になりました。データ上は、ギリギリとは言え一応有視界飛行が許される気象条件ですが、経験に応じて安全係数を大目に取っておくのは鉄則。飛び始めたばかりの私などは緊急事態に取れる選択肢も少なく、特に用がなければ飛ばないに越したことはありません。

試験官「さて、MVFRとあるけど、野外飛行へ行くとしたらどうする?」私「このルートでのクロスカントリーは現在の自分の能力では無理ですね。飛びません」。「鳥も飛ばない日に飛ぶのは人間だけ。それだけに十分念入りに状況を検討して判断しなければならない」とよく言われます。この日にクロスカントリーに行くとすれば、今ならためらいなくIFRの飛行計画を提出するところです。

「よろしい、じゃぁ行ってみようか」口頭試問は無事合格、飛行試験に移ります。

有形無形の励ましを受け

1054197852[1]口頭試問を無事終え、いよいよ飛行試験のため外へ出ますが、相変わらずの強風。このような条件で飛んだことはないことはありませんでしたが、よりによってこんな日に…。

試験官が「どうする?君の判断だよ」そう、この飛行の機長(PIC)は受験生の私であると、試験前に試験官に渡された書類に書いてありました。私もそれに合意の上、署名しています。厳しい飛行になるのはもとより覚悟の上。

「行きます」そう告げて機体へ向かいました。

■叱咤激励
試験が終われば数日内に帰国。そんな話を副所長のお母さんとしていた時のこと、「いつ試験?」「明日」「じゃその後は少しゆっくりできるわね」「もし受かればね…」その時、「“もし”って何だ、“もし”って!」気色ばんだ声の主は、なんといつものマイルド教官です。

「しっかり訓練して、大丈夫だと認めたんだ。試験官を楽しく乗せてくる、それだけのことじゃないか!それを何だ、その言い方は!」

言わんとすることはよく分かりますが、別に何を否定するわけでもなく、合格はあくまで可能性であり、謙遜の意味も込めたつもりです。しかも、試験に付き物の不安感も無縁ではありえません。そこで「言うことは分かるけど、でもこの緊張感、分かるでしょう…」というと「そりゃ落ち着かないのは分かるよ。でも必要な水準に達したとしてサインしたんだ、いつものようにやれば済むことだよ!」…言いたい事はありましたが、あえて否定的な方向に持っていくことはなかろう、ここはアメリカ流に従おうと思い直しました。それだけ自信を持って送り出してくれているということでもあり、ありがたいことではあります。

バタバタした試験直前には、サインをもらうべき項目にサインのない部分が1個所あったことも発覚しました。鬼軍曹のものです。探していると、「10分前に飛行機の方へ出てったよ」と聞き、急いで駐機場へ。すると、別の訓練生の外観チェック中でした。間に合った!

「おーい!」「どうした!」「抜けてるサイン下さい!」ログブックを差し出すと「準備いいか?」というので「緊張してるけど…」というと「大~丈夫だ、お前は優秀なパイロットだからな。な~んも問題ないぞ」と、地上でのいつもの陽気な態度を見せながらグッと親指を突き出す仕草を決める軍曹。「そうか、俺は優秀なパイロットなんだ、優秀なパイロット、優秀なパイロット…」と暗示をかけながら元へ戻っていきました。

■搭乗
いつもの作業をいつものように確実に行えば、まず間違いを犯す可能性は相当低くなります。この日も早速コックピットを開けて必要な数字を記録帳に記録、エンジンキーをダッシュボードの上に置き、チェックリストに従って点検を進めます。「マスタースイッチ、燃料タンク、ライト、警報、フラップ、電子装置…」。

今度は外に出て、機体をチェックします。「胴体、昇降舵、位置灯、補助翼、翼端灯、燃料、オイル、プロペラ、静圧孔、ピトー管…」燃料は満タン、オイルも規定の量が満たされています。キャップが閉まっていることも確認、エンジン始動に移ります。

ドアを確実に閉め、ヘッドセットを付け、電子機器スイッチを入れてマイクチェック。そしてエンジン始動…「キュキュキュキュ…ブルン、ババババババババ」最初はまったくエンジンがかからなかったものが、曲がりなりにもかけられるようになったんだと感慨にふける一瞬。今から思えばそれでも未熟でしたが(今もって未熟ですが…)。

ATISで気象情報を取り、ランナップチェック。「ババババ…ブオーン」真空ポンプ、油圧、油温、電流・電圧…すべて順調。いよいよ動き出します。

■声を励みに
出発承認の管制官を呼び出します「セスナ123AB、トリプラー出発方式要求、ATISは“A”取得済みです」。すかさず「3AB、出発承認。トリプラー出発方式でクラスB離脱を許可、高度1500フィートを維持してください。出発管制は119.3MHz、レーダー識別番号は0224です」。パイロットの間で人気抜群の美声管制官(実物も大変な美人だそうで)の声でした。

復唱します「トリプラーでクラスB離脱、1500フィート、119.3、番号0224」。「3AB、復唱はその通りです。行ってらっしゃい!」今までこの声に何度励まされたことか…正直、やる気が萎える声を聞いた時はいささかゲンナリしますが、今日はのっけから「天使」。教官をはじめ、ここまで支えてくれた人の励ましの声も脳裏をよぎります。

「今日はツイてる、行ける!」何も根拠のない言葉で自分を鼓舞し、滑走路へ向かいます。「地上管制、セスナ123AB、離陸のため移動」「3AB、滑走路4R、誘導路Fまで走行どうぞ」「4R、F了解」強風の中の飛行試験、間もなく開始です。

強風を突いて

1054195152[1]強風のため、離着陸の小型機はほとんどいません。「管制塔周波数を聴取するように」との指示で周波数を変え、F誘導路まで走行を続けます。

■横風日和
それにしても風の強い日です。滑走路へ入る前など、風が後から吹いてきてややもすると操縦桿がバタンと飛ばされそうな感じでした。相対的な風向に応じた操縦桿の位置に固定しておきます。着陸機があるので、そのまま待ちました。

「離陸位置に着け」着陸機が滑走路を出てから離陸、早速「横風離陸」が試されます。操縦桿を右に倒して待つことしばし…「離陸どうぞ」。試験開始、混合気、閃光灯、トランスポンダーに目を走らせて滑走を始めます。40、50、55ノット、操縦桿をゆっくりと中立に戻して引き起こし…「プー」ちょっと速いか。失速警報を消すため、操縦桿を少し緩め、右足も忘れずに踏み込みます。

■絶え間なく
上昇しながら出発管制と交信、左旋回、水平飛行と、立て続けに操作が続きます。木の葉のようにあおられる機体、ブレる針路…ここで試験官が「フードを着けて」と指示、基礎計器飛行の科目、指定針路、高度、旋回、無線標識の電波捕捉・追跡と、次々と指示が来ます。この間にクラスBを離脱、いつもの訓練空域へ。計器飛行による異常姿勢からの回復操作も行います。上昇旋回中の失速直前の飛行からの回復、高速での旋回降下からの回復など、いろいろなパターンがありますが、これは比較的落ち着いてこなせました。「ではフードを外して」試験官の指示でフードを取ります。

続いて失速。スロットルを絞って、操縦桿を引いて引いて…「ストーン」機体が右に傾きますが、左の方向舵ペダルを踏んで回復。続いてパワーオン。科目は低速での操作に移ります。

次は別の空域へ。しばらくすると「ヒューン、シュルシュルシュル…」エンジン停止の緊急事態です。定められた手順で回復操作を模擬しつつ、着陸地点を探します。いつもと違う場所を飛んでいるので、どこがいいか…実は平地だらけの場所、トラクターが走ってそうな道がありました。「あそこに降ります」「どこ?」「左側の長い」小道です。見えますか?」「よろしい」。トラフィックパターンをなぞるように丁寧に、確実に降ろします。我ながらいい感じ、試験官からも「いいね」とおほめの言葉です。

ある程度まで降りて緊急事態を離脱、海上へ出て急旋回に移ります。周りに他機は、いない。左から、操縦桿を引いて…1周、右へ…終了。いつもの訓練空域へ再度戻ります。

■やっぱり風が…
S字旋回とアラウンドパイロンを行いますが、やっぱり正確な風向に自信がありません…それでも教わった通りに直角をなして、何となくアラウンドパイロンから始めると、「あれ、いい感じで行ってたと思ったのに、通り過ぎちゃったね。もう1回やってごらん」と試験官。微妙に風向がずれていたようです。気を取り直して旋回。続くS字旋回も何とかうまくいったようです。とりあえずの難関を突破し、着陸のため、カラエロア飛行場へ向かいます。

■高過ぎ
最初は通常の着陸。ちょっと強めだったものの、何とかしのぎ切って滑走路を離脱。次は短距離離着陸。離陸は飛行機の持てるエネルギーを短距離で発揮して一機に所定の高度まで上がるもの、教わった通りにこなしました。問題は着陸。着陸直前の障害を通過してからはほぼエンジンパワーなしで滑空せよ、という理解をそのまま放置して、高過ぎる位置で減速のための引き起こしをする癖があり、今回もそれが露呈して、落着寸前になってしまいました。

しかも、接地直後は「空力ブレーキを最大に効かせるため、昇降舵を最大限後に引く」という操作をしたところ、試験官が「力を緩めて!」と指示。「それは不整地着陸で使う方法だよ」と言うのですが、はて…その後どの教本を見ても最初の操作は間違っていないことが分かったのですが、一応科目の目標である「短距離での着陸」は果たしているので、教育的指導だったのでしょうか。

最後に不整地離陸法で離陸、ホノルルへ戻りました。不整地着陸はホノルル着陸時、最後の最後に審査されます。

ライセンサー!

1054195225[1]H1ハイウェー上空を飛びながらホノルル空港のATISを聴取、進入管制を呼び出して識別番号をもらい「クラスB進入どうぞ、滑走路4Lのダウンウィンドまで、H1/H2インターチェンジ経由で進入、追って指示あるまで2000フィートを維持するように」と、ようやく慣れてきたこの交信に始まる進入操作も、もちろん気が抜けません。

■聞きなさい!
アロハスタジアム上空を飛行中に「管制塔と交信するように」との指示があり、「ホノルル管制塔、セスナ123ABです」というと「進入を継続するように」との指示。今くらいから降下指示を出してくれると降下が非常に楽なのですが、何も言われないので、しばらくそのまま飛びます。

1分後、試験官が「降下指示はまだかな?」と聞くので「どうなんでしょう」というと「聞きなさい!」と一喝。降下が遅れると後でとんでもない降下率で降りることにもなり、厄介です。管制塔も失念していることがあるので、確かに積極的に聞かなければいけない場面でした。「セスナ3AB、降下を要求します」「3AB、パイロットの判断で降下してください。滑走路4Rに着陸どうぞ」。着陸許可まで出ました。おもむろに降下、不整地着陸のために低めに降りる準備をします。

減速してベースレグ、そしてファイナル…少しパワーを入れながら進入。低く路面をなぞるように接地…と、横風にあおられ、あわてて操縦桿を倒しますが、倒し方が甘かったようで、少しヨタヨタしながら降りてしまいました。

■オメデトウ!
エンジン停止までが審査項目。滑走路を出て誘導路を走行、スポットに入ると「おめでとう、これで自家用パイロットだよ」と手を差し出す試験官。「合格ですか?」と、多分安堵の表情を浮かべながら答える私。過去最悪のコンディションの中で無事に全科目をこなして帰ってきたとは言え、あまり満足いく出来ではなかったので、やり直しも少々覚悟はしていたのですが…良かった!

無線を聞いていたという Runway さんが早速駐機場の方へ歩いて来られるところでした。「どうだった?」と聞かれる Runway さんに、感謝の意味を込めて力強くサムアップ。要所要所で本当にお世話になりました。

飛行時間を記録したノートを持ってスクールに戻ると、既に試験官から結果を聞いていた人たちから「やったな!」「おめでとう!」と祝いの言葉をもらいました。強風で飛行を中止した訓練生が大半だったので人影もまばらでしたが、そんな中で我ながら無事に飛ばしてきたなと、正に自分をほめてやりたい気分でした。

ラウンジでは試験官が仮免許を作成していました。「Private Pilot – Airplane Single Engine Land」自家用操縦士(飛行機陸上単発)たった今から、ライセンサーの仲間入りです。試験官は一言「もう少し横風着陸を練習しようね。もっと思い切り操縦桿を倒さないと」と助言してくれました。そして「オメデトウ」と日本語であらためて言葉をいただき、握手。試験、終了です。

■多くの人の助けを得て、さらに上へ
飛行機を飛ばすことは意外と易しく、そして意外と難しい、そんな相反する感触を得た訓練でした。地上を歩いていた者が何の足がかりもない空を飛ぶことの不思議な感覚、自分のイメージと実像を一致させることの難しさは、今も変わりません。学ぶべきこと、修練すべきことがまだまだたくさんあります。自家用操縦士という大きな成果を挙げましたが、まだまだ小さな一歩に過ぎないことを痛感しています。

挑戦のきっかけとなった Runway さんをはじめ、教官にスクール職員など、生涯の中で今回ほどいろいろな人の手助けをありがたく感じたことはありませんでした。これから飛び続ける時の初心に帰るにふさわしい環境で訓練を受けられたことを感謝したいと思います。

訓練はまだまだ続きます。悪天夜間をものともしない全天候型パイロットへの資格、計器飛行証明で、新たな飛行の世界が開かれるのですが、詳しくは「楽園上空の目隠し訓練」で。それでは、次回まで…。

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