RUNWAY24は・・・パイロットへの滑走路、この空を飛びたいという夢に向かって・・・Take-off してみませんか

Sky CapⅡ

計器飛行訓練編

1054194970[1]天一郎 さんの自家用操縦士編が完結しました。

本当に素晴らしい訓練記で、これから訓練をはじめたいと考えている人達には興味がもてる内容です。
天一郎 さんの力作投稿に感謝しています。

また今後このコーナーでは引続き、計器飛行訓練編を投稿して頂ける予定です。

ご期待ください

IFRのすすめ

自家用編、お読みいただきまして誠にありがとうございました。再び天一郎です。

1054301157[1]ようやく自家用操縦士資格を取得しましたが、まだまだ大きな制約があります。そう、雲が多すぎたら飛べません。夜も飛ばない方が安全です。外が見えないし、周辺に他機がいても分かりません。相手も自分を見つけてくれないでしょう…飛ぶ条件に制約が加わるのでは、せっかく取った資格の面白みも半減、足かせをはめられているようなものです。

その足かせが解ける資格が、計器飛行証明です。英語では Instrument Rating と言いますが、この資格を持っていると行える飛行方式「計器飛行方式」(Instrument Flight Rules)にちなみ、一般的に「IFR」と呼ばれています。有資格者を「IFRパイロット」などと呼んでいますが、これは自分の能力の及ぶ限りあらゆる条件下を飛べる訓練を受けた「卓越の称号」と、私は勝手に思っていました。向こうに雲が立ち込めている時、他のパイロットが飛行を中止するのを横目に淡々と飛行計画を練るIFRパイロットの姿、私は非常にうらやましく思ったものです。

そんな私も、しばらく経ってからIFRを取得しました。正に憧れのIFR、資格取得後は図に乗って人があきれるような飛行を繰り返しています。ある日の飛行をちょっと紹介すると…

1930 ホノルル-カウアイ 2100、
2130 カウアイ-ヒロ 0030、
0040 ヒロ-ホノルル 0300

…この飛行の翌日、飛行計画を提出するためにFAAの事務所に電話すると、「あ、じゃぁ今日はヒロ行かないんだ?」と、電話で応対した通信官の言葉。その通信官、カウアイで飛行計画を提出した際に無線で受け付けてくれた人らしく、「こんな時間に?小型機で?ヒロ?しかもその後ホノルル?」と思ったそうです。我ながら無茶をしたものですが、これも管制官がレーダーで常時監視し、決められた飛行コースを無線標識(あるいはGPS)をたどって飛ぶのが前提となるIFRだから安心してできることです。

雲に入った?すぐに目の前の計器パネルだけを見て飛んでください。標識が遠い?管制官が誘導してくれます。目的地が見えない?電波を捕まえて降りて行ってください、滑走路はその先です…。

旅客機は基本的にすべてIFRで飛行しています。頻繁に管制官と交信する気分は、さながらいつもエアバンドの向こうにいるプロパイロット。これまでとは別次元の飛行体験が楽しめることでしょう。もちろん、物が見えないことを前提にした技術を身に着けるので、飛行の幅が広がりますし、より安全な飛行にもつながります。

有視界(VFR)で飛んでいる最中に天候が悪くなることもありますが、IFRを持っていればすかさずIFRで飛び続けることができます。「Unable VFR, request IFR」は、そんな困った状況から抜け出すための切り札。次回も楽しく飛行を続けられる可能性が格段に高まります。パイロットとなった今、訓練前の準備も、あらゆる意味でやりやすいのではないでしょうか。

訓練は「安く、たくさん、効果的に」

1054302526[1]自家用の訓練では、ひたすら飛行の基礎を体得しました。対照的に、IFRでは「考える」訓練がかなり大きな位置を占めるようになります。特に海外で訓練する場合、次の訓練までに時間が開きがちな私達にとって、これは何を意味するのでしょうか…「訓練で時間と場所の制約がなくなる」、私はあえてそう言いたいと思います。学科はいずれやらなければいけませんし、各種規則・チャート類も暇があればいつでも読めます。さらに、IFRは飛行訓練も自宅で十分にできます。

■PCで心ゆくまで
またまたPCシミュレーターの登場です。自家用の頃と違い、IFRに必要な「計器“だけ”を見て正確に飛行する」訓練でこそ、シミュレーターを十二分に活用したいものです。

PCシミュレーターで物足りないのは「体感」ですが、「体感を無視」するよう教えられるのがIFRの飛行訓練。純粋に計器しかよりどころのないシミュレーターは、こうした前提で正確な操作を行うための格好の訓練装置ではないでしょうか。事実、何人かのプロパイロット(ラインパイロットも含む)に聞いたところ「シミュレーターはいい練習になるよ」と答えていました(プロが使う「動くシミュレーター」ではなく、PCショップで買えるあのシミュレーターです)。

しかも、1回入手してしまえば、お金の心配なく、心ゆくまでさまざまな練習ができます。進入路の右側に山肌が迫っているような、実際の飛行では一歩間違えば死んでしまうような進入も(本当にこういう所があるのを知って冷や汗をかいたものです…)、シミュレーターでは至極安全に、しかも繰り返し練習できます。

蛇足ながら、訓練時間に算入できる訓練用PCシミュレーター(PCATDと呼ばれます)というものがあります。PCATDの基準を定めたFAAの通達によると「資格(計器飛行教育資格)を有する教官の指導下で、PCATDによる訓練時間のうち10時間を超えない時間を計器飛行の訓練のための飛行時間に算入することができる」とのこと。

これに必要なセット1式はさほど高いものとも思えないので(それでも計30万円ほどしますが)、同好の士を募って共同購入、有資格の教官に教えてもらい、後は飽きるまで(無意識に操作できるようになるまで)練習する、というスタイルも考えられます。アメリカに「IFR速習コース」というものがいくつかありますが、そうしたコースには「PCATD利用無制限」を売りにしているものも多いようです。

■英語だって練習しやすい、はず
IFRでは絶対に交信は避けて通れませんが、「英語が苦手で…」とお嘆きの方、航空英語の教材は自家用よりもIFRの方がたくさんあります…趣味の航空ビデオ・DVD・CD、また、お持ちの方は航空レコード・テープを活用しましょう。

これらに出てくるのは旅客機ですが、IFRでは基本的に旅客機も自家用の小型機も同じような指示を受けて飛びます。違うのは機体のスピードだけ。もっとも、高速機のパイロットには我々の存在はずい分厄介なこともあるようですが…もちろん、VFRで出てきたような、IFR用の交信シミュレーターもあります。

■早速準備を!
IFR特有の各種規則もたくさんあります。普段はほとんど使わなくても緊急事態にはそれに頼る以外ないという、VFRでも見られたような約束事も多くあります。学科の内容もそれに比例して増えるので、試験準備にかかる時間が相応に多くなります。私が試験準備を始めようと問題集を見た時は、ページが自家用の5割増あったのではないかと思ったほどです(実はさほど大したものではありませんでした)。

いずれにしても、どれもいつか必要になる内容ばかりです。資格を取ってからも定期的に復習を繰り返すのは変わりませんので、IFRを志す皆さん、これを読み終わったら早速準備を始めましょう!

メモを取る技術?

IFRの訓練を検討するに当たり、最初にお話しすべきことはまだほかにいくつかあるのですが、まず何があっても避けて通れないATCとの交信について先に触れることにします。IFRの実技の一つでしかないことは確かですが、言葉の問題は純粋に時間を多くかけて克服するのが早道であること、また、突き詰めていけばいわゆる「メモを取る技術」に過ぎないということでもあるので、早めに習得して飛行訓練に専念していただきたいと思います。

ATCの指示には長いものも短いものもあります。高度、針路の指示などは短いので、メモを取る前に復唱、その後もらった数字をメモしておく、またはコンパスのバグを設定するなどで覚えておくようにします。これに対し、出発承認のように比較的長いものは、正確に記録しておかなければいけません。もちろん、記録の時間は限られています。そのため、地上にいる時と飛行中とを問わず、簡潔かつ正確に、後で読み返しても正確に指示を実行できるような方法でメモを残せるよう、意識して練習する必要があります。操縦訓練の前に、テープなどを聞いて書き取ってみるのがいい練習になるでしょう。

■クラフト
クラフト…乳製品の会社、工作、いろいろありますが、IFRの交信で一番最初にメモしなければならない項目で、Clearance(承認目的地)、Route(飛行ルート)、Altitude(高度)、Frequency(出発管制の周波数)、Transponder(スクオーク)、頭文字を取ってCRAFT=クラフトです。ホノルルからマウイへ飛ぶ時のクリアランスの例を書いてみましょう。
自機:「Honolulu Clearance, this is Cessna 123AB, IFR to Maui,
with (Information) Alpha.」
ATC:「Cessna 123AB is cleared to Kahului (Maui) via
Molokai 4 departure, Molokai, Victor 8, Blush,
Victor 6. Fly heading 120 after departure.
Maintain 5000 feet. Departure frequency will be 119.3,
squawk 0256.」
自機:「Cessna 123AB is cleared to Kahului via Molokai 4,
Molokai, Victor 8, Blush, Victor 6. Deaprture heading 120,
maintain 5000 feet, frequency 119.3, and squawk 0256.」
ATC:「Cessna 3AB, readback is correct. Have a nice flight!」
教本の類には「CRAFT」を縦書きにして順番に書くよう薦めているものが多いので、それにならってみます。 C=マウイ
R=モロカイ4出発方式(出発方式=DP/SID=は後述)、
モロカイVOR、V8航空路、ブラッシュ(変針点)、V6。
離陸後すぐに針路120に旋回。
A=5000フィート
F=119.3MHz
T=0256
ほぼ例外なくこの順番でクリアランスが出されるので、型として覚えておくと楽でしょう。お持ちの航空ビデオ・CDなどでもこの順序で交信が聞こえてくると思います。

1054633386[1]■書き取ってみる
では、これはどのように記録すればいいのでしょうか。全文を平文で書く必要はないので、矢印などの記号を活用して、自分で分かる限りどのような書き方でも構いません。私はどのように書くかというと…
MK4 MKK V8/BLU/V6/120/5K/119.3/0256
DP/SIDや通過するVORは、チャートに示されている略号で書き(なお、MK4は本来MKK4)、後は単純に斜線で分けるだけです。
5000=5Kが少し「短縮した感じ」がするでしょうか。

実は、飛行計画に書いた中身がそのまま読み上げられることもあるので、その用紙を手元に置いておいて中身を確認、それに足りないものを書き足す、という方法もあります。この場合、高度は用紙の別の場所に書いてありますが、復唱するためにルートの横に続けて書き足しておくと直感的に把握できていいと思います。もちろん、スクオークも一緒に書いておきます。

こんなクリアランスはどうでしょう。ホノルルからカウアイへ向かう場合です。 「Cleared to Lihue via Keola 2 departure, Keola, 258-degree
radial Honolulu, 148-degree radial Lihue. Maintain 6000,
expect 8000. Departure frequency 124.8, squawk 0234.」
ケオラ2出発方式で「ケオラ」まで飛行後、ホノルルVOR258度ラジアルで飛行継続、その後リフエVOR148度ラジアルをインターセプトしてカウアイへ向かえという指示です。よくあるクリアランスですが、公示されているものと少々異なるところが変則的です。メモも先のものと大差ありませんが、 keo2 keo 258hon 148lih M6K E8K 124.8 0234
のようになります。大文字・小文字の別も適当です。高度の「M」「E」は、要求高度が8000フィートのところ、当面は(maintain)6000フィートで飛べ(セパレーションの都合などで)という指示で、後に8000フィートへの上昇許可が出る予定(expect)であることを示しています。こうした内容を区別する記号も各自で工夫するといいでしょう。「ラジアル」「インバウンドコース」「ヘディング」など、明確に区別が必要な数字でも同様です。

■あくまで「自分に」分かりやすく
IFRの教本に「ATCの指示をメモする記号の例」といってぼう大な表が書いてあるものがありますが、あくまで参考程度に留めておくだけでいいと思います。

私も訓練開始前は「これ覚えるのか…」と陰鬱になったものですが、最初からすべての記号が必要になるような飛行をするわけでもなく、表中の記号が必ずしも自分に合っていることもないので、経験を積むにしたがって自分の型を作る、使えると思えばそうした表中の記号も使う、というスタンスでいいのではないでしょうか。

訓練コース

1054701295[1]IFRの訓練を検討中の方には、既に自家用操縦士として相当の経験がある方から自家用の訓練が終了したばかりの方、またはまだ自家用の訓練中、という方まで、いろいろいらっしゃるかと思います。早い時期にIFRを取っておくとそれだけ取りうる選択肢が広くなるので、特に自家用取得以前、または取得直後の方々には、早い時期に何らかの形でIFR向けの訓練を重ねておく、または検討しておくことを個人的にお勧めしますが、その前に、IFRの訓練コースをおおまかに見ておくことにしましょう。

念のため申し上げておくと、IFRの訓練ではこれまでのように天候不良で中止になることがほとんどなくなるので、いずれのコースを取るにしても「せっかくの時間が無駄になった…」という事態になることは格段に減るでしょう。

■選択は2通り
おなじみFAR61の65条に、IFRに必要な要件が書かれています。必要な飛行経験は、
1.PICクロスカントリー最低50時間
2.次の経験を含む計40時間の計器・模擬計器飛行時間
a.有資格教官(CFII)による最低15時間の計器飛行訓練
b.次の要件を満たす、IFR(計器飛行方式)による最低1回のクロスカントリー
ⅰ.航空路、またはATCの指示による総距離最低250カイリの飛行
ⅱ.各着陸地点への計器進入
ⅲ.航法装置を利用した3種類の計器進入
もう一つは、FAR141に基づく「FAA公認プログラム」で、こちらは必要な最低飛行時間の規定はなく、公認のシラバスの下で最低35時間の同乗教育を行うこと、となっています。35時間は最低限の時間で、これを上回るシラバスを組んだ上で公認プログラムとすることも可能、という指摘を見かけましたが、基本はその通りです。いずれにしても35時間は多少なりとも上回るので、35時間プラス、としておきます。

■どちらがいいか…
141で訓練するには、スクールが141訓練校としてFAAの公認を受けていなければなりません。それ以外での訓練はすべて61に基づくことになります。経験豊富な方は、PICクロスカントリー50時間、計器・模擬計器飛行40時間、という要件を既に満たしているかもしれません。そうでない方も、費用を折半するためにもう1人と組んで乗れば、模擬飛行時間もPICクロスカントリー時間も安く稼げるでしょう。

一方、141のスクールで訓練していた場合、自家用から間を置かずにIFRの訓練に入れるため、いわゆる「癖」を直すのに無駄な時間を費やさなくてよくなる、という指摘があります。あるスクールで聞いた話では、経験者にIFRの初期の訓練を行う場合、平均して10-15時間を「癖」の矯正に費やすとか。もっとも、61で訓練する場合でも、そのあたりは定期的に同乗教育を挟みつつ飛行経験を積む、という進め方で対処できるのではないか、とも思います。

「61か141か」という話は、教えてもらうのにどのくらいの費用がかかるのか、という話でもあるので、前回までのお話で触れた、「自助努力」による訓練も考慮した上で最大の効果が上がる方法を検討してから決めてもいいのではないでしょうか。どちらにも決めかねている場合は、特に決まったシラバスがない61で個々の技能を「つまみ食い」しながら覚えていく方法が、柔軟性が高いかと思います。

■私の場合
私のスクールは141公認校で、なおかつすぐにIFRの訓練を続けたかったので、自家用終了とともに141のプログラムで勉強を進めるべく準備を始めました。このスクールは、座学にセスナ社の「セスナ・パイロット・キット」という141仕様のコンピューター教材(CDROM)を使っているので、早速それを購入、次回の渡航までに学科部分を終わらせるスケジュールを組みました。自宅のPCでこれを見ながら学習を進め、渡航時に学習記録を保存したフロッピーディスクをスクールに渡して記録をコピーし、早々と学科試験を済ませて飛行訓練に専念する算段です。

教材とチャート

IFR用の教材もたくさんあるのはご存知の通りなので、中身を見る機会があれば、自分に合うと思ったものを選ぶのが一番いい、というのは言うまでもありません。前回お話ししたように、私はFARパート141用のCDROMで勉強することになったので、それについていくつかお話ししようと思います。

■イメージしやすい、が…
「セスナ・パイロット・キット」は、基本的にはアメリカの航空雑誌などによく広告が出ている「キング・スクール(King School)」のコースをセスナ・コース向けにアレンジしたものです。映像があるので、利点はやはり、本来は自分で想像しなければならない計器飛行状態を目で見せてくれるということでしょう。飛行中の実機の様子も見せてくれるので、実際の訓練もイメージしやすいのではないかと思います。特に、実際に雲に入った場合というのはなかなか想像しにくいものかと思いますが、そういう映像もあるので、例えば着陸時、「正確に降りよう…」という意識を新たにしやすい、ということも言えるかと思います。

レッスンは23のセクションに分かれており、1日1レッスンのペースで進めて行けば約1ヶ月で終わることになります。もちろん、苦手なところを繰り返して見るのも自由ですが、レッスン記録を付けるため、順番はともかく1度は全部に目を通しておく必要があります。飛行訓練は各レッスンの順番に従って進むので、何かの都合で途中のレッスンが終わらないと、「じゃぁ1つ飛ばしていこうか」ということができません。141では必ずシラバスの順番で訓練するので、気をつけないといけないところです。

セスナ・キットの難点は、高いことでしょう。私の購入価格は忘れましたが、セスナのホームページでは1式299ドル(送料別)で売ってます。参考程度に見たい、ということであれば、他にもCDROMやDVDを含めさまざまなIFR用の視覚教材があるので、各自で探してみるといいでしょう。

なお、セスナキットにはIFRのPTSとC172SのPOHが同梱されているので、重複しないようにしましょう。

1055645588[1]■やっぱり人気のあのチャート
日本で勉強しているだけの間、それから初期の飛行訓練の間は必要ありませんが、そのうちIFR用のチャートが必要になります。アプローチチャートとエンルートチャートも官製のものがありますが、私の知る限り、世界のエアラインパイロットが使っているといってマニアにも人気の高いあのチャートを愛用している人達が圧倒的でした。そう、ジェプセンチャートです。

差し替えサービス付きのものが一般的に知られているようで、これを注文するとそれなりの値段がしますが、このサービスがない1回使い切り、あるいは次の発行まで有効、という版のものを買うと、道路地図に毛が生えた程度の値段(送料別)で入手できます。「次まで有効」版は大陸48州とアラスカだけが対象になりますが、例えばカリフォルニア州向けは1セット25ドル。バインダー類が別に必要になりますが、「ジェプセンチャート=1セット●万円」というイメージがあった私は、あのチャートがこんなに安く買えていいのだろうか、などと思ってしまいました。

ちなみに、1回使い切り版は差し替えサービスがない以外はFARなども一通り揃ったフルセットのため、少々かさばり、値段も少々高め。これに対し、「次の発行まで有効」版はアプローチチャートとエンルートチャートのみのセットのため、コンパクトにまとまっていて、値段も安くなっています。「1回飛んだら次はいつになるか…」という場合でも、十分に予算の範囲内かと思います。

実際のチャートを手にしながら学科の勉強をすることで、想像が膨らみ、やる気も高まるのではないでしょうか。期限が切れた場合も趣味になら使えるので、シミュレーターで思う存分練習しましょう。

座学再開

1055656376[1]教材は一通りそろったので、再び勉強の開始です。自家用で失念していた口頭試問対策も、今度は帰国前に対策本を買ってきたので、ある程度勉強が進んでからやることにしました。交信対策は、Runway さんに依頼して前回使用したシミュレーターソフトのIFR版を購入してきてもらいました。問題集は東京で購入(割高になりますが、買い忘れてしまったので…)、さらにオンラインの模擬テストサービス(有効期間60日)も渡航2ヶ月前に申し込みました(これは無料サービスがあることを後日知りましたが…)。

自宅では前述の「セスナ・キット」をベースに、自宅外では、問題集を中心に昼休みなどの時間を利用して適宜問題演習を繰り返しました。喫茶店で普通の会社員が怪しげな定規(コンピューター)に鉛筆で印を付けている(対地速度計測のため)姿は、もしこっちを見ている人がいれば、相当怪しい人間に映ったことでしょう…。

実技はもちろん自宅で愛用しているPCシムで練習しましたが、これは細かい手順は抜きにしてとにかくコースをなぞれるようにしました。PTSもありますが、渡航までにこの基準を考えてもストレスがたまるだけだと思ったので、あえて無視しました。もちろん、有資格者や教官などが身近にいれば、いろいろ質問することでより実のある練習ができるかもしれません。

渡航までの時間が非常に長く開いてしまい、緊張感を持続するのに苦労しました。ある期間は思い切って勉強をやめ、その後再開した時にどれだけ知識が定着しているかを測るのも一手かと思い、そうしました。最初からよく分かっているもの、かすかに覚えているもの、「こんなのあったっけ?」と、その存在すら忘れているものなど、いろいろありましたが、どれもいずれ必要になる知識なんだと思い、失速しそうになる頭にエンジンをかけて記憶するよう努めました。

日本での座学は、本当に出発ギリギリまで活用して準備します。成田で出国手続きを済ませるとインターネットカフェ(無料)がありますが、そこから模擬試験サービスにアクセスして練習、模試を受けます。自分にとってはIFRの学科はなかなか手強く、得点が上下するので最後まで安心はできませんでしたが、出国直前の最後の演習でも過去数回と同様の水準の得点が出たため、一安心して機内へ向かった次第です。

目隠し飛行

再び飛行訓練にやってきました。勝手知ったる空域に飛行機、しかも今度は待ちに待ったIFR訓練…準備期間も十分にあり、再びひたすら飛行訓練に専念します。教官は、若い南米出身のロナウド。既に2000時間+の飛行時間を持つというつわものです。

■ひたすら計器を見て
計器飛行の基本は、外を見ないで水平飛行、旋回、上昇・下降が正確にできるようになることです。これに、細かい速度調整などが加わります。

早速、いつものように飛行機に乗り込み、エンジン始動、出発許可をもらい、タキシング、離陸へと進んでいきます。ここまではいつもの訓練。離陸後、「アイ・ハブ・コントロール。じゃあフード着けて」というロナウドの指示でフードを着けますが、ここから長い長~い計器とのにらめっこの始まりになるとは…。

この間もまだ上昇中。基本的にVFRで飛んでいるので、ロナウドの指示を受けながら指定方位に旋回、上昇、そして水平飛行を続けていきます。この辺は特に難しいことはありませんが、いつも突風にあおられるルートなので、体感的にいやぁな感じがします。

■時間を計りながら飛ぶ
旋回、上昇・下降は、時間が関わってくるものが多いことはご存知の通りです。計器パネルの隅に付いている旋回率計では360度旋回を2分で行うようになっていますし、VSIでは「毎分」何フィートで上昇・下降するかを知ります。高度3500フィート、方位090で飛行中の飛行機を、1分間で高度4000フィート、方位270に持って行きたい場合…旋回はスタンダードレート(標準率)、VSIを毎分500フィートに持っていくことになります。

洋上に出たようで、気流も穏やかになってきました。早速、上昇・下降、旋回、その組み合わせの訓練です。単調な操作ばかりですが、ちょっと気を許すと頭が混乱しそうになるので、飛行経路を想像しながら慎重に操作します。その間に水平飛行を繰り返し、変針しながら訓練空域はどんどん移動しているようです。フードを着けているので、顔を横へ向けない限り空の状況が分かりません。この日は非常にきれいだったはずなんですが…。

1056167922[1]■コンパスが…!
急旋回をやることになりました。右・左と続けますが、2回目でDGが空回り!「あれ…?」AIは正常に動いているようですが、何とも面妖な動きです。試しに反対方向へも旋回してみますが、改善せず。結局、このまま普通の計器飛行を繰り返しながら帰ることにしました。

外はもう夜になっています。「フード外していいよ」と言われ、実に2時間半ぶりに外の景色を拝めました。眼下はハイウェーの灯りなどが光ってとてもきれいです。ロナウド「いやぁ、きれいだなぁ…僕、この時間のフライトが一番好きだな」。まぁ、ね…今日はフードをかぶってる人間を横目に景色を満喫したんだろうなぁ…。

ATISを取り、アプローチと交信、クラスBに進入、いつものように着陸して終了。3時間余りの飛行で、既に5レッスンが終了してしまいました。これらの飛行は、徹底的に身に着くように今後もことあるごとに繰り返して行うことになります。しかし、計器飛行は気が疲れる…。

計器が壊れても

1056331069[1]前回、DGが空回りする場面がありましたが、雲中飛行の最中に虎の子の計器の一部が壊れることも十分にありえます。一歩間違うと非常に恐ろしい状況になりますが(私もいくつか経験があります…)そんな時でもあわてずに残りの計器で飛行できるよう、十分に訓練を積んでおきます。

■直接の指示はなくても
DGが壊れた場合、針路はすかさず磁気コンパスを参考にします。同時に、旋回計を参考にしながら、自機が旋回しているかいないかを見るようにします。前回おかしかったのはDGだけでしたが、これまで学習したように、このような場合はAIの動きも同時に疑うことになります。垂直方向の動きは、ASI、高度計、VSIを参考にします。

自家用の訓練の時ですが、鬼軍曹にAI、次にDG、VSI…と、目の前にあるあらゆる計器にステッカーを貼られたことがありました。それでもわずかに残った旋回計とASIだけで希望の針路、高度を飛べるんだと言われて「なるほど」と感心したものですが、この訓練を経ると納得が行きます。鬼軍曹の例は極端ですが、1つ計器が壊れても別の計器の指示を基に本来知りたい指示の内容を大まかに知ることができます(VSIが壊れていても高度計で上昇・下降を知ることができますし、その割合はASIで大まかに分かります)。

こうした計器状態の中で、異常姿勢の回復訓練も行います。上昇中に失速直前で傾いている場合、あるいはVSIが下方に振り切れている状態で螺旋降下しているような場合、しかもいずれの場合もAIが使えない場合、実際に遭遇するのは非常に恐ろしいのですが(繰り返しますが…)、できるだけ早めに、手順通り落ち着いて水平飛行に戻すようにします。

■恐怖の実例
危ない実例にはできるだけ多く触れておくことが航空安全の要諦である、と言われるので、私がIFR取得後に遭遇した実例をご紹介して、これからの訓練・飛行に役立てていただきたいと思います。

ホノルルから夜間、IFRでマウイへ向かった時のこと。離陸の引き起こし時にAIが白目をむいた状態になり、ギョッとしながらも指定方位に旋回、そのままASIを見ながら飛行を続けました。

それからしばらくの間はAIも落ち着いていたようなので安心して飛んでいましたが、5000フィートを通過した頃に雲中飛行、乱気流が強くなり、横方向の維持が難しくなると同時に上昇も厳しくなりました。失速回避のためASIに目を走らせた後、AIを見ると…また白目をむいています!通常なら訓練通りですが、この時は針路090のはずがなぜか180、果ては210まで流されてしまい、ピッチもASIを見ながら一生懸命コントロールしているものの、強風にもみくちゃにされてわけが分からない状態。

そのうち「ヴォーン!」という爆音が聞こえてきます。「フルスロットル…?」スロットルレバーは少し戻してあったはずなのに…でも、回転計はリミット一杯、見ると、VSIはマイナス方向に振り切れ、高度計は目まぐるしい速さで反時計回りに回転、5000フィートあった高度が既に4000フィートを切ってなおすさまじい勢いで降下中!身体もシートに押し付けられているようで、操縦桿もかつてないほどの重さでなかなか元に戻りません。

単純に計算すれば数分内に海面に激突…この非常時にそんなことまで計算してしまい、死の恐怖に襲われると同時に、早く姿勢を確認できる手段が欲しい…と思いながら、まだホノルルからそう離れていなかったので「このまま落ちていけば町の明かりが見えるかも…というより見えてくれ!」と思った瞬間、雲の切れ間からその明かりが見え、ようやく無事に姿勢を立て直すことができました。

「シビアタービュランスに遭遇しました」とデパーチャーコントロールに知らせたものの、遭遇した場所も分からず、後で「ココヘッド近くの乱気流は“シビア”でしたっけ?」と聞かれて初めて自分の機位が分かる始末…しかも「シビア」な中で小型機が飛べるのか?という疑問もあり、それよりも、翌日に飛行仲間に「AIが不安定ならすぐ戻るべし」という至極もっともな意見をもらうなど、反省材料の多い飛行でした。

故障ではないものの、AIの水平線のセットを間違えたために、似たような状況の中、失速直前の姿勢で、なおかつあさっての方向に飛んでしまったことがあり、ピッチを厳しく守ることの大切さを思い知った次第です。

危ない状態は訓練を超える環境で発生することが往々にしてあるので、パニックに陥ることもある程度止むを得ないことなのかもしれませんが、このような実例は意外と多くあるようなので、ご参考にしていただければ幸いです。

みんなつまづく…

ほかの空港・飛行場は知りませんが、ホノルルでIFRの訓練をする場合、トラフィックの兼ね合いから、訓練を希望する旨を管制塔に電話で事前に連絡して調整することになっています。計器着陸の練習やホールディングの練習などは、飛行中の他機が多い時間には許可されないことがあるようです。許可された場合は、出発時のクリアランスで出発許可を求めると、事前の調整通りの許可が返ってきます。

■ホールディング
「みんなここでつまづくんだよね」というホールディングですが、「何につまづくの?」と聞くと、自機の針路によりホールディングパターンに入るべき進入方法の選択に迷う訓練生が多いとのこと。机上では簡単に見えますが、計器飛行に慣れていない間は確かに難しかったかもしれません。

ホノルルのホールディング個所もいくつかありますが、ココヘッドVORもその一つ。ホノルル離陸後はレーダーベクターで飛び、上昇中にホールディングのクリアランスが出ます。重要な内容がいくつかあるので、メモしておきます。

■高いぞ!
出発時のクリアランスはココヘッドまで。高度は6000フィート(5000?)が指定されます。これまで上ったことのない高度です。今まで1500とか2500とかしか上ったことのないところ、徐々にIFRらしくなってきました。ちょっと前の進度チェックで同乗してくれたマイルド教官の教え通り、出発前に無線機・計器のセッティングをすべて完了しておきます。

滑走路4Rから離陸、すぐに右旋回して針路120度へ。いつものようにすぐフードを着けます。しばらくはそのまま上昇、すると、ココヘッドVORへの最終ベクターで出発管制からホールディングクリアランスが出ます。

「Clear to hold over Koko Head radial 039, right turn, maintain 6000, expect further clearance at 2330.」

ココヘッドのラジアル039に沿って右旋回でホールディングせよ、という指示です。全部メモしておく必要がありますが、特に旋回方向と「EFC」時間は確実にメモし、特に旋回方向は厳守しなければなりません。これをしくじったためにとんでもないことが後に…。

ところで、指定高度の6000フィートはちょうど雲が出ており、実際の状況が見事に体験できました。「フード外してみなよ」という教官の言葉に従い、実際の雲中飛行として訓練を進めます。これまでの地表に近いところとは違い、静かでヒンヤリした感じが印象的でした。

■パターンに乗れず…
風が強く計器飛行の訓練には不利といわれるホノルルですが、風向が一定なために風が読みやすい、という意見もあります。ところが、ここでも風が読めずに流され、本来インターセプトできるはずのラジアルが捕まえられず、かなり苦労しました。片道1分の「レーストラック」はかなり短く、一度大きくずれると修正が完了する前にVORを通過しているような有様でした。

資格取得後に自宅のPCシミュレーターで練習した際、見事に教科書通りのパターンに乗れたのに唖然としたほどです。無風状態で「型」を身に着けておけば、もっと効率よく訓練が進んだかもしれません…。

1059389181[1]

 

ヤマ場

1059539504[1]計器飛行のヤマ場は、何と言っても計器着陸です。あらゆる計器飛行の技術を駆使して、前の見えない中を地上に向けて降りていきます。頻繁に変わる風向のため、針路の微調整は欠かせず、降下率も一定の範囲内に収めなければなりません。

■周り回され…
いつものように、管制塔との事前調整は済んでおり、今日もココヘッドなどでのホールディングの練習から入ります。ホールディングをしている最中に「Say intention」と聞かれるので「Would like to fly multiple approches followed by missed approaches, beginning with ILS」と答えると、そこから滑走路4R、ILSアプローチの最終コースへのベクターが始まります。

「Fly heading 270, descend and maintain 1500」管制官の細かい指示が届き、フードの中でDGを見ながら旋回。横の教官も、時折指示を出す以外は黙っています。この間に、いつものように無線機・計器のセットをすべて終えておき、アプローチチャートで針路、決心高度などをあらかじめ確認し、最終ベクターに備えます。この間、他機もベクターを受けていますが、いずれもこちらより高速機。先にビジュアルアプローチで降ろす間に、こちらは大きく迂回させられているようです。

「どこまで飛ばすんだ…」フードの縁を見ても洋上しかなく、レーダーベクターには従うだけなので、このまましばらく飛び続けます。「Right turn heading 320」さらに右旋回、ILSのコースは042、最終ベクターは通常010、あと2回ほどのベクターか…。

■ファイナル
「Right turn heading 010 until established on the localizer, cleared ILS runway 4 right approach」ローカライザーをインターセプトし次第、ILS進入を実施。速度・フラップをセットして最終進入に備えます。また、ここでタワーと交信します。

縦の針が反応、上から降りてくるので、ここで右旋回、最終コースに乗ります。後はグライドスロープの針を待つのみ。飛行コースが風で揺れるので、細かく調整します。ここのアプローチは約6マイルDMEでグライドスロープがつかまるので、おもむろにスロットルを絞り、時計をスタートさせて降下を開始します。

右から風が吹いたと思ったら次は左から、滑走路に近づくにつれて針の振れが大きくなり、あるところで振り切れてしまいました。ここで教官が「針を真ん中に!」と注意しますが、ちょっとその指示は遅いんじゃないのか、ロナウド君…?

グライドスロープにも気を配らなくてはなりません。FAAのPTSではグライドスロープの下側の誤差許容範囲は「ゼロ」。厳密に適用すれば、真ん中から少しでも下に降りると不合格になります(注:これは非精密進入の場合でした。ILSはローカライザー、グライドスロープともに中心から上下左右3/4以内のずれに収めること、とPTSにあります。2003年11月21日)。操縦桿、べダル、スロットルを極々わずかに操作し、上下左右の誤差を徐々に修正していきます。

間もなく決心高度。ほとんど滑走路目前の高さですが、ここで「じゃぁミストアプローチ」というロナウド教官の声で上昇操作、タワーに「Executing missed approach」と通報し、事前に指示された方位、高度へ飛んでいきます。この後。VOR、ローカライザーアプローチなど、希望するアプローチを何度か練習し、帰投します。

■アーク
VORDMEから等距離の円周を描いて飛ぶ「DMEアーク」という飛び方も練習します。一度やってみると割と簡単に飛べた感じですが、私のこれまでの体験ではファイナルまでベクターされることがほとんどなので、ここでもこれ以上は触れないでおきます。ただし、実地試験ではしっかり科目に入っていたので、念のため。

非精密進入

1060755968[1]IFRの滑走路への進入方法と言われて真っ先に脳裏をよぎるのはILSですが、ご承知のように、VORやNDBを利用した進入方法もあります。高度情報が地上の施設から提供されないので、ILSなどの精密進入に対して非精密進入と呼ばれます。コース上に定められたフィックスまで段階的に降りていくので「ステップダウン」などと呼ばれますが、各フィックス間に定められた最低降下高度まで降り、出来るだけ早めに滑走路を確認するようにします。各フィックスを通過した後は、多目の降下率で早めにその高度まで降りるように言われましたが、教科書には各フィックスと最低降下高度の点を結んだ滑らかな降下角を維持して降りていくよう指示しているものもあります。訓練時に教官に確認してみるといいでしょう。

■実際に飛んでみる
基本的にVORをトラッキングしながらDMEなどを利用してフィックスを通過するごとに適宜降りていくだけなので、気をつけて降りること以外は特別に難しいことはないと思いますが、「非精密」ということを念頭に置いて実体験をお話ししようと思うので、参考にしていただければ幸いです。

私がホノルルで飛んでいた頃、隣のモロカイ島の空港は常に雲がかかっており、VOR-Aアプローチが指示されました。モロカイVORの10マイル手前から降下を開始、指定の高度まで徐々に降りていきます。254ラジアルをトラッキングしながらインバウンドコース074で飛んでいくのですが、ここで常に左側から強風が吹いているため、ちょっと油断するとすぐにコースの右側に飛ばされ、VORまでの距離もないため、針がいったん左側に振り切れるとほとんど修正の余地がありません。

最初にそんな目に遭った時、やはり雲中飛行となりました。アプローチのクリアランスが出るまではVMCだったのが、進入開始ごろまでに見事にIMCになる、実にうまくできたレイアウト(?)です。見る見るうちに針が左へ振れて行くので、慌てて機首を左へ振るものの間に合わず、最悪のケースも考えて30度ほど左へ旋回してそのまま降りていきました。VORを通過してからもそのまま降下を続けていったところ、ようやく雲から出たらすぐ右側に山肌が…!滑走路もすぐに見えたので、南向き滑走路に降りるためにいったん左旋回、ダウンウインドレグに入って無事着陸しました。

これ以後、モロカイへの進入時にはコースの左側を飛ぶように機体を持っていくようにしました。それから、未知の場所へ行く際はセクショナルチャートも必ず入手しておくようにしました。IFRで飛ぶ場合も、目視目標の確認はセクショナルを活用した方が確実です。大体の地形を頭に入れておく意味でも、とりあえず何でも入手しておくことを強くお勧めします。

コックピットマネジメント

1062903755[1]以前にも書きましたが、特にIFRで飛ぶ時は地上でできる準備はすべてしておけと言われます。無線機の操作にしてもVFRと比較して頻繁に触ることが多く、その他にもこまごまとした操作が多くなるので、飛行中にもできるだけまごつかないように準備しておくことは大事です。また資格取得後の例になりますが、こんなことがありました。

■ビジュアルアプローチのはずが…
ところどころ雲が出ていたものの、ホノルルへの降下中は比較的晴れ間も多く、このまま行けばワイキキの北東を通過して南西向きにビジュアルアプローチで降りられるか、というような天気でした。アプローチコントロールから「Report airport insight」と言われたので、ココヘッドを通過したあたりで「Airport insight」をコール、そのまま進入許可をもらいました。この時は空港を確認したと思っていました。

すっかりそのまま降りるつもりで飛び続けると、突如アプローチが「Turn right heading 090, climb and maintain 3,000 feet」と言ってきました。右には山もあるし、とにかく訳が分からないので「Confirm turn RIGHT heading 090, AND climb to 3,000?」と聞くと、「Affirmative, turn right to 090 and clibm to 3,000. Tower just called us that the final area is under IMC now and I will vector you to LDA 26L」というではありませんか。通常は大型機が誘導される、滑走路26Lへのローカライザーアプローチ、しかもいにしえの香港よろしく途中で斜めに旋回しながら進入を継続するアプローチです。

そんなものは初体験ですし、しかもそこでこれを指示されるとは夢にも思わなかったので、チャートの用意もありません。しかし、チャートを確認しないことにはまったくデータが分からないので、旋回と上昇を続けながらいそいそとバインダーからチャートを取り出し、急いで周波数やコースをセットしました。その間にも管制官から新しい針路と高度が指示されます。後続のジェット機には「速度落とせ」の指示と「Slow moving Cessna ahead」の補足が通知され、かのパイロットが「オ~~ケィ!」と返答しています。スンマセン…。

ようやくセットが終わった途端、LDA進入の許可が出ましたが、少しはコースの手前に誘導されたのかと思いきや、なんといきなりコースの中間部分まで飛ばされたことが分かり、高度も高く、速度もさらに落とす必要があったので、相当焦りました。「Slow moving」の当機には「Best forward」の指示が出ていましたが、過速も恐怖です。しかも、しっかりローカライザーに乗せなくてはいけません。数分もしないうちにMDA、滑走路が見えませんでしたが、アプローチライトが確認できたのでそのまま降りてしまいました。後で聞いたら、後続機はみんなモロカイまでダイバートしたとか。

■予備の書類も
通常と違う、南西からの「コナウィンド」が続いたマウイからのIFR出発時、聞いたことのない出発方式のクリアランスが出ました。「ビーチなんとか」と言うので、一応書き取って復唱、ノンビリとバインダーを探したものの、どこにも見当たりません。「おかしい、ジェプセンチャートなのに…」と思いながら探しても、やはりありません。エンジンが回っているので、あまりモタモタしたくもありません。

そこで、急いでカバンからPCS(A/FD)を取り出してみると、ありました!南行きの「ビーチ2出発方式」と書いてあります。あとはレーダーベクターになるまでそのページを開いたまま飛びました。

さて、何ゆえにジェプセンチャートになかったのか…後日チャートの主に確認すると、改訂版差し替えの際に誤って廃棄してしまったかもしれないとのこと。こんなこともあるので、「常に備えよ」の精神で整然とした飛行を心がけたいものです。

プロ気分でクロカン(その1)

1062903102[1]外が見えない状態でのホールディング、アプローチなど、計器飛行の技術を一通りさらった後は、待ちに待ったIFRクロスカントリーです。もちろん、離陸直後から着陸直前までフード着用、外はほとんど見ることができません。この日はホノルル-カウアイ-ラナイ-ホノルルの区間、計4時間半近くをフードを着けて飛びました

■「乗客」を乗せて
訓練中なのでもちろん教官が同乗しますが、この日はさらに、日本人訓練生のミーコさん、ロナウド教官の友人で日系航空会社に勤めるダシルバ氏も後席に乗ってきました。ミーコさん、訓練の合間を縫っての遊覧飛行をもくろんだのでしょうか…後学に役立ててもらいたいというのがあり、ダシルバ氏は現役のコックピットクルーでもあるので、さらに気合いを入れて臨みます。

ホノルルでは、準備が済んだらまずクリアランスデリバリーを呼び出して出発のクリアランスをもらいます。「Honolulu Clearance, Cessna 123AB, IFR to Lihue, with Alpha,」「Cessna 123AB, clear to Lihue via Keola 2 Departure, 258 degree-radial Honolulu, Keola, 148 degree-radial Lihue, direct.Maintain 6000, fly heading 120 after departure, departure frequency 124.8, squawk 1456.」無線機、VOR、その他計器類を全部セット、「ケオラ2出発方式」のチャートとエリアチャートを取り出してルートを確認、滑走路へ動き出します。

ホノルルは大きい機体から小さい機体、速いものから遅いものまで、さまざまな飛行機が飛来します。自分の離陸の順番がジェット旅客機の直後ということもよくあるので、後方乱流には十分注意しないといけません。幸いにしてまだ経験がありませんが、大型旅客機が別の大型機の後方乱流に入ってひっくり返りそうになったことがあるという話も聞いたので、できれば目視で確認しながら飛びたいところです。もちろん、計器飛行状態でそうなったらすかさず「翼を水平に」を順守します。

「Cessna 123AB, cleared for take off. Caution wake turbulence.」ちょうど進行方向を斜めに交差する滑走路を737が離陸していきました。さほど大型の機体ではありませんが、あなどれません。一応右旋回するポイントを考えておきます…といっても、旋回前に「ハイ、じゃぁフード着けて」と言われるので、見張りは教官まかせになりますが…。

出発管制が呼んできます「Cessna 123AB, traffic 2 o’clock 5 miles westbound is a B717 descending to 2000,」「Traffic insight, Cessna 123AB,」「Thank you, maintain visual separation with the traffic. Turn right heading 270 to intercept Honolulu 258-radial, climb and maintain 6000,」などなど、交通情報と指示が巡航に移るまで繰り返されます。

■お気楽な巡航
訓練機のセスナ172SP、おなじみ高翼単発機の最新型で、新しい機体を買い始めた訓練校などではかなりポピュラーになりつつあるようですが、まだ日本ではまったく同じ仕様(出力180馬力)のものはないようです。しかし、搭載機器がまったく同じ型のものがいくつかあるそうで、もしかしたら日本で乗っているという方もいるかもしれません。この型にはオートパイロットが付いているので、VOR(またはGPS)をセットして少しノンビリします。

お金持ちの訓練生から借りたという計算機型のコンピューターを持ち込んだロナウド君、カリフォルニアでの訓練生時代もこのようなコンピューターを持ち込んでTASやら残燃料やら計算していたとか。さらにはGPSで「RJAA “direct”」と成田までの方位、時間、距離を出して「うわっ、すげえ遠い!」などと言いながら笑ってるのを横目に一緒に笑ってましたが、この時間、日本では計算盤を使った風の算出などをするとか、経由点での経過時間を記録するとか、かなり精密な訓練をしているという話を後日耳にし、実情の違いはあれ「あんまりノンビリし過ぎてもいけないのかな…」などと考えた次第です。

プロ気分でクロカン(その2)

1063030674[1]IFRでは通常、出発飛行場の管制機関→航空路管制→到着飛行場の管制機関の順にコントロールを受け、各飛行場では出発・進入管制(デパーチャー/アプローチコントロール)が離陸後および着陸前の飛行機を誘導します。ハワイでは、ホノルルなど一部の空港を除いて航空路管制と進入・出発管制が統合されており、最終コースへのベクターもすべて航空路管制であるホノルル・センターが担当しています。

■「パイロットの判断で降下せよ」
降下の時間が近くなり、遊んでいたロナウド教官もそろそろ指示を始めます。カウアイのATISを聞き、風向や使用中の滑走路、使用進入方式などを確認し、チャートを準備しておきます。しばらくすると、ホノルル・センターから指示が来ます。「Cessna 123AB, descend at pilot discretion, maintain 2000 feet, expect VOR/DME runway 35 approach.」降下するにはまだ遠い距離ですが、2000フィートまでの降下許可、パイロットの判断で降下を開始せよ、との指示です。

この進入方式では、2000フィートから進入を開始することになっており、進入開始フィックスも定められていますが、大体はその位置までベクターされます。フィックスまでの距離も分かっているので、本来はここでおもむろに計算盤を取り出して対地速度と残り距離の関係から降下開始点を決めて降下…と行きたいところですが、実際問題として後続のジェット機などを先行させるために迂回させられたり、前方の雲をできるだけ早期に避けたりといった事情もあり、少々早めに降下して2000フィートを水平飛行、ということが多くなるような気がします。

あらかじめVORの周波数、進入コースなどをすべてセットし、ホノルル・センターの最終ベクターに備えます。そして、「Cessna 123AB, turn right heading 300 to intercept Lihue 148 radial, clear VOR/DME runway 35 approach.」ここでホノルル・センターのベクターが終わり、「Radar service terminated, contact Lihue Tower. Good day,」と言われるので、VORの電波をつかまえつつ、カウアイの管制塔を呼び出します。

「Lihue Tower, Cessna 123AB, VOR/DME runway35,」「Cessna 123AB, Lihue Tower, cleared to land.」早速着陸許可が出ました。あとは慎重にVORをなぞって降りるだけですが…この空港のこの滑走路は実に横風がきつく、電波をなぞるのも一苦労です。それでも何とかショートファイナルまで持っていくと、ロナウド君が「どれどれ…」と取り出したのがデジカメ…ショートファイナルの写真は確かに見て楽しいものですが、人が横で一生懸命機体を操ってるのによぉ…。

■着陸、タクシーバック、即離陸
横風にあおられながら何とか着陸、滑走中にロナウド君に「この後どうすればいい?」と聞くと、タクシーバックして次のクリアランスをもらうよう指示。代わりにロナウド君がタワーを呼び出すと「その機の教官、ロナウドじゃないですか?」という女性管制官の声。「久しぶりだね!」「本当ね!」「また電話してよ」という会話を交わしていたので、「どちらさん?」と聞くと、元の訓練生だとか。ハワイで飛んでいると暇な時間にパイロットと管制官が他愛もない世間話を交わしていることがよくありますが、ずい分余裕があるんだな、と思いつつつい真面目に聞いてしまいます。

とりあえず今降りた滑走路を出て誘導路に入り、元の方向へ走行すると、「We have the clearance for you when you are ready to copy,」と言われるので、「Stand by,」と言って待たせておいて滑走路末端の手前まで移動、停止して「Ready to copy, go ahead,」と言って次の目的地、ラナイまでのクリアランスをもらいます。すべて書き取り、復唱、チャートで次のルートを確認し、あらためて無線機などをセットします。この間、管制塔からは「Advise when ready for departure,」と言われているので、滑走路へは入らずに準備を進めます。

準備完了、管制塔に「Cessna 123AB, holding short of runway 35, ready for departure,」と言うと、「Cessna 123AB, cleared for take off,」と離陸許可が出るので、滑走路に入り、滑走開始。離陸、指定方位に旋回、再度ホノルル・センターを呼び出して一路ラナイ島へ向かいます。

プロ気分でクロカン(その3)

1064066584[1]カウアイ島を離陸後、指定方位に旋回すると、カウアイ島から再びホノルル・センターと交信します。特に出発方式は指定されていないので、指示された方位でリフエVORの電波を捕捉、航空路に乗ります。

■管制官が手を引いてくれる
VFRでは、空域ごとに必要な交信内容、許可などが異なるため、「あれ必要だったかな、いらなかったかな…」などと考えたりするのが意外と面倒くさいと思ったものですが、IFRでは空域の種別に関係なく管制官が手の届く限り誘導してくれるので、一通りの技術さえあればこちらの方がむしろ楽なのではないかと思います。見張りなど、基本的な義務がパイロットに課せられているのは当然ですが、一応は下のレーダーで見てあれこれ指示を出してくれるのは安心です。

高い高度に上がると、これまでVFRの低い所では遭遇しなかったような雲に入ることがあります。フードを外して実際の「計器飛行時間」を付けるなどの事情で自ら好んで雲に入ろうという人もいますが、侮れない強風が吹き荒れていることがよくあるので、特にモクモクと盛り上がっている雲が前方に現れたら高度を変えたり左右に迂回したりして避けた方が安心でしょう。

高度変更で避ける場合、小型機は上昇性能がさほど良くないので、早めに管制官に要求します。「Honolulu Center, Cessna 123AB, request,」「Cessna 123AB, Honolulu Center, go ahead,」「Cessna 123AB, request climb to 9000 feet,」「Cessna 123AB, climb and maintain 9000 feet,」「Climb and maintain 9000 feet, Cessna 123AB.」特に上昇したい理由を言う必要はありません。

左右に迂回したい場合、方向、方位(または旋回の度数)、距離を言うことになります。距離の判定には私も自信がないのですが…あまり大きい雲に遭遇したこともないので、「数マイルくらいかな…」と言っています。「Cessna 123AB request deviating 20 degrees to the right due to avoid cloud,」「How many miles would you like to go?」「About a couple of miles,」「Cessna 123AB, deviation to the right approved, report back on course,」「Deviating to the right and will report back on course, Cessna 123AB.」

指定のルートから外れ、経由地・目的地へ直行することもできます。目的地へのルートが「く」の字になっている場合など、こちらから直行をリクエストしたり、または飛行中の機数が少なければ管制官から直行を希望するかどうか聞いてくることもあります。

■ノンタワー空港へILS
目的地のラナイ島へ近づいてきました。ノンタワー空港です。管制官が「What’s your intention at Lanay?」と聞くので、ILSで降りる旨を伝えます。最終コースへはアークを飛ぶ手順ですが、これも最終コースまでのベクターを要求します。ここから、降下と方位の指示が出ます。

「Fly heading 045 to intercept localizer, clear ILS runway 3 approach. Frequency change approved. Report on the ground for canceling IFR,」ILSに乗る指示、ノンタワーのためセルフアナウンスするための周波数変更許可、同じくノンタワーのため着陸後にホノルル・センターを呼んでフライトプランを終了する手続きの通知、がまとめて伝えられるので、もれなく復唱、同時にILSに乗る準備に入ります。

ILS周波数、最終コース、決心高度(DA)、ミストアプローチの手順…すべてチャートで確認しながら、今度は同時にラナイの周波数に合わせ、「Lanay traffic, Cessna 123AB, on ILS runway 3, 5 miles on final for landing, Lanay,」と、数マイルごとに一方的に送信します。一応いい感じにコースに乗っているようですが…崖の上に作られた空港のため、海岸から陸地に入る瞬間に強い風が吹き、ドンドンコースがそれていきます…「針を真ん中に!」という教官の声に心の中で「他に言うことないんかぃ…!」と毒づきつつ、何とか立て直してDA、「Landing」とコールし、何とか着陸。

スポットで止まり、「Honolulu Center, Cessna 123AB on the ground of Lanay,」「Cessna 123AB, go ahead,」「Would like to cancel IFR flight plan now,」「Roger, your flight plan is cancelled,」「We’ll call you back for another clearance to Honolulu in a few minutes,」これでIFRが正式に終了しました。

私の経験ではラナイの風が静かだった試しがありませんが、IFRで進入するのはさらに疲れる…ともあれ、再度ホノルル・センターを呼び出し、ホノルルへの帰り支度に移ります。

プロ気分でクロカン(その4)

1066830094_196x131[1]ラナイでは1度滑走路を離れて駐機場へ入り、方向を変えて停止、その後すぐにホノルルセンターを呼び出してクリアランスをもらいます。「Honolulu Center, Cessna 123AB on the ground of Lanay」「Cessna 123AB, Honolulu Center. Go ahead」「Cessna 123AB, request an IFR clearance to Honolulu」「Cessna 123AB, cleared to Honolulu via JULLE 4 Arrival. Maintain 6000. Departure frequency 119.3, squawk 0256. Clearance void if not off by 0345.」最後の数字は、この時間(協定世界時)までに離陸しないとクリアランスが無効になる、という通知(VIFNOタイムといいます)です。ラナイだと大体5分以内でしょうか。これまでの経験で、VIFNOタイム2分というとんでもない通知をもらったことがありました…。

■到着経路へ
いそいそと滑走路を逆行して離陸位置につけ、再び無線で場内に一方的に通知しながら離陸、帰りのコースに乗るために一度南西へ左旋回しながら上昇しつつラナイ島の海岸線を越え、ホノルルセンターと交信。センターが「Radar contact,」とレーダーで捉えたことを通知し、現在位置を教えてくれます。

これからホノルルへ向けて飛ぶルートは、本来は他の場所からホノルルへ向かう飛行機の到着経路になるルートで、正式には「ジュリー4ラナイトランジション」(JULLE 4 Lanay Transition)という名称が付いています。ホノルルVORから278度のラジアルに乗って海上のポイント「ジュリー」に向けて降りていくコースですが、要求する進入方式や先行機、後続機の状況などでアプローチコントロールのレーダーベクターを受けるのが常です。

ハワイに限らないようですが、アプローチコントロールとの交信が始まると真っ先に「どの進入方式を希望するか」と聞かれます。天気のいい日は、通常の定期便などは空港を目視しながらビジュアルアプローチで降りていきますが、計器進入の練習をしたい自家用パイロットがILSやVORDME、あるいはGPSアプローチなどを要求すると、要求した進入方式に合うように管制官が最終コースまで誘導してくれます。この日は滑走路4RへのILSを要求、最終コースまで迂回させられました。

■長い…
ILSのアプローチチャートなどを見ると、巡航ルートから最終コースへは一度西へ飛んでから段階的に北東へ向かうよう誘導されます。空港を中心にして約20キロ沖を迂回させられる感じですが、その間にもこちらを追い越していく後続機の情報が次々と入ってきます。計器飛行中の私は一応それらの飛行機は見えないことになっているので、横のロナウド教官が確認して通知してくれます。しばらく後に同様の状況に遭遇したことが何度もありますが、こちらより高い所を追い越し、遥か彼方に消えていくターボプロップ機やらジェット機やら…これらの飛行機には「速度落とせ」の指示が出ることがありますが、こちらには常に「最大速度で」との指示。急減速をするのも面倒なので、ゼロフラップのまま90ノット前後で接地するのが癖になりつつありましたが、多発じゃないんだし…。

それにしても長い迂回時間です。少し右を向くと、向こうにワイキキとおぼしき海岸線が見えます。その間に自機を追い越す機体が1機、また1機…その間にまた無線機のセット、進入コース・高度の確認、各種チェックリストを終了しておきます。高度は既に1500フィート、ちょっと間違えればすぐに海面、厳しく高さを守りつつ指示に従ってコースを変えていきます。

「Cessna 123AB, turn right heading 010 until established on the localizer. Clear ILS 4R approach,」ようやく最終ベクターとなり、タワーと交信。グライドスロープも捕捉し、この日の仕上げに入ります。慎重にコースをなぞって…左に修正したと思ったら今度は右、風が強いのはホノルルの常ですが、何とか決心高度まで持ってきて滑走路目前。ようやくフードを取って降下…接地!初のIFRクロカンで後席にお客さんを乗せるのも緊張はしましたが、ある意味自信をつけられたと思います。

このクロカンをもって訓練シラバスは終盤となり、そろそろ訓練は総仕上げに入っていきます。

あと一歩…

1068012231_177x190[1]クロスカントリーを終え、訓練は総仕上げに入ります。出発前の準備から着陸後までのプロセスの中に含まれる要素はいろいろありますが、クロスカントリーをこなしたことで、その大半の技術が身に付いていることが確認できます。セスナパイロットセンターのシラバスの最終チェック項目は、習得すべき技術を以下のように列挙しています。

photo●(飛行前)
クロスカントリーのプランニング
飛行前確認
タキシングチェック
VORテスト
離陸前チェック/エンジンランナップ

●(出発時)
計器出発手順(DP/SID)
ATCクリアランス/手順

●(飛行操作)
水平飛行/トリム
水平飛行時の速度変更
標準率旋回(スタンダードレートターン)
速度一定の上昇/降下
定率上昇/降下
旋回上昇/降下
急旋回(45度バンク)
失速からの回復
異常姿勢からの回復

●(航法)
VORインターセプト/トラッキング
(NDB装備機はNDBについても同様)

●(ホールディング)
ホールディング/横風の修正
(VOR、NDB、インターセクション、DMEの装備により実施)

●(計器進入)
DMEアーク
標準進入方式(STAR)
方式旋回(プロシージャーターン)
計器進入のセルフブリーフィング
ILS、ローカライザー、VOR、GPS、NDBによる計器進入(装備状況に応じ)および進入復航

●(通信障害)
通信障害時の手順

●(計器故障時の手順)
非精密進入
異常姿勢からの回復
時間計測による磁方位への旋回

●(着陸後)
飛行後のチェック

これらの操作に関する知識は学科試験での勉強で既に知っていることになります。覚えておくべき知識が多い上に実際の操作にもさらなる正確性が必要なのがIFRの難しさですが、一つ一つ丁寧に覚えていけば不可能ではありませんし、私もここまでたどり着きました。実地試験まであと一歩です。

閑話休題…日本のIFR試験

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1068821272_155x155[1]間もなく実地試験ですが、日本でもいずれIFRで飛びたいと願いつつ機会を捉えて航空局の学科試験を受けているので、ちょっとご紹介します。

「計器飛行一般」という名称の試験で、問題数は20問。うち6、7問は問題用紙の裏に印刷されたログに航法ログを作成しながら答える内容、残りが法規、工学、気象などの知識を問う問題で、全部を2時間以内に解答します。60問を2時間半で解くFAAの学科試験とは問題数が違いますが、とにかく正確(精密=コンマいくつまで)な航法ログを作成するのが合否のカギを握ると言えるでしょう。FAAで聞かれるような、チャートの読み方を問う問題は一切ありません。気象関連は類似の問題があるかもしれませんが…ちなみに、私は航空局のこの試験に1度落ちています。

非常に高額という評判(?)の訓練は受けていないのでもちろん実地試験は受けていませんが、他の方の体験記が他のHPで読めると思うので、そちらを参考になさるといいでしょう。国土交通省航空局技術部乗員課監修の「操縦士実地試験実施基準/細則」(FAAのPTSに相当)に沿って細かくチェックされるという話です。

最近は航空局認定のFTDが巷に増えたらしく、一頃より非常に安価に訓練できる上にログブックにも訓練時間を記入できるようですが、それから実機への移行がどのくらいスムーズに進むのか、全体として訓練費用の大幅節約になっているのかどうか、私も不明な部分が多くあります。また、学科試験や口頭試問の進め方、果ては実際の飛行に必要な知識を得る教材があちこちに分散してしまっている印象があります(これは計器飛行証明に限りませんが…)。さらには、アプローチチャートで最も使い勝手が良さそうなのがアメリカ製のジェプソンチャート…航空局が編集しているAIPをマトモに買うととんでもない金額になるので、せめてアプローチチャートだけでもリングノートのような形にしてもらって地方別にまとめてもらえれば…などなど、注文は尽きません。

天候の変化が多い日本でこそ小型機のIFRが必要かと思いますが、さまざまな制約で普及はまだまだなようです。改善が遠い先の話にならないよう、各方面の尽力を望む次第です。

実地試験

1069464850_147x196[1]いよいよ実地試験の日がやってきました。試験官は自家用と同じ超ベテランの日系人です。今回もPTSに沿って口頭試問、飛行試験の順で行われます。試験官からはあらかじめ、ホノルルからコナまでのフライトプランを作成するように伝えられました。また、計器進入をホノルル空港で複数回行うため、訓練時同様、あらかじめ管制塔に電話して計器進入の許可をもらっておきます。

スクール下の受付に入ると、教官のアルフが「よぉ、今日実地試験だな」と話しかけてきます。いろいろ話している中でVOR進入の最低降下高度(MDA)の話になり(判定基準はMDAから+100フィート、-0フィート=MDAを下回ることは許されず!=の範囲)、「MDAに下がって、そこからさらに下がりそうになったら、とにかくトリムを上げ舵側に回せ!」と実に実践的(?)なアドバイスをくれました。幸い、このアドバイスを実践せずに済みはしましたが、土壇場に教わる小手先のテクニックは意外と大きな安心につながります。アルフに感謝…。

■簡単なコースを
試験時間になりました。いろいろ忙しいようで、試験官も慌しく準備を進めています。まずは書類のチェック。ログブックと実地試験申請用紙を見比べていた試験官が「ん?」と言って近くにいた教官のウォーリーに「ちょっとここおかしいな…」と質問しています。ログブックと申請用紙に記入した時間が違うとのことで、よく集計し直してみると、数え間違いがあったことが判明。申請用紙を微修正して教官のサインをもらい、あらためてOKをもらいます。

IFRで規定されている巡航高度などの定義や代替飛行場設定の際に必要な気象条件、通信できなくなった際の手順など、必要な規定や手順のほか、IFRで使う計器類の動作原理などの説明を求められた後、フライトプランをチェックします。

しばらく眺めていた試験官、「ん~…」とうなりながらすかさず「よりよい」方法を指摘します。「これでも間違いではないけど、ここからSTARを指定してくれば、ILSのファイナルコースまで直接飛べることになるだろう。その方が簡単だと思わないか?」なるほど、勉強になりました…。

約1時間ほど口頭試問が続いた後、実地試験に移ります。

■何とかうまく行った…?
飛行機に乗り込み、いつものように手順を進めます。試験科目はココヘッドVOR上空でのホールディングと、ホノルル空港での精密・非精密進入(とそれに伴う進入復航)です。エンジンを始動、ココヘッドまでのクリアランスをもらい、タキシング、離陸、出発管制官のベクターを受けます。もちろん頭にはフードが乗ってます。

「Cessna123AB, hold over Koko Head radial 039, right turn, maintain 6000. Expect further clearance at 2330.」すべてメモして復唱、ホールディングのための設定を済ませます。ここで、メモには大きく「R」と書いて、ホールディングの旋回が右旋回であることを確認したつもりでした…。

最終ベクターからの039方向へのエントリーは「パラレルエントリー」。VOR通過直後に左旋回し、039ラジアルと平行になるように1分間飛び、その後再び左旋回でラジアルに会合します。会合後のVOR通過、すかさずホールディングの周回に入るべく「左旋回」に入ります。そして通常通り反対方向へ飛んで再度左旋回でVORへ…すると管制官が「え~、右旋回ですよね」と言うので「Affirm, next will be the right,」と答えると「Roger」との返事。局上通過と同時に右旋回へ移ろうとすると試験官が「進入に移ろう」というので、管制官を呼ぶと、試験官が進入科目を伝えています。

最初はアークを飛んでのVORアプローチから。アークに入るのが少々早かったものの、いい感じで距離を保っています。チェックリストを済ませ、最終コースへ。ここからMDAまで降下…なんとか「下限-0フィート」を維持し、続いて進入復航します。

次はローカライザーアプローチ。ベクターを受けつつ、無線機などをセットし、最終ベクターに備えます。ここで試験官がおもむろにDGを隠したため、最終コースの針路の確認は頭上のコンパスを見て行います。ILSの針を見つつ反応の遅いコンパスをチラチラを気にし、なおかつVSIと高度計にも気を配り…同じく高度とコースを何とか保ち、再び復航。そしてILS。何とか中心を捉え、今度はDHで滑走路を確認、バイザーを取って目視で着陸します。

ホールディングを反対側に回った以外はうまくいった、かな…と思いつつ試験官を見ると、難しい顔をしています。そして放った一言「君は重大な間違いを犯した…」。

ふぅ~……

1069465643_179x155[1]着陸後のタキシング中、に言われた「君は重大な間違いを犯した」…やはりホールディングを逆に回ったのが問題だったようです。実地試験後の評を受けるため、「(スクールの)上に来なさい」というので、チェック終了後にスクールに戻ります。

スクールで待っていた面々は、当然受かったことを期待する笑顔で「どうだった?」と聞いてきますが、「分からない」というと「え、何かあったのか?」と聞いてくるので、「今からそれを聞いてくるんだ」と言って、試験官が待つ2階へ上がりました。

■バカ者!
早速試験官のお言葉…「ホールディングの方向というのは、周回すべき方の反対側に危険な障害物があるから、管制官がそれを避けさせるために右か左かを指示するんだ。指示と反対側に回った場合、ホノルルは海しかないからいいけど、本土なら山があるかもしれないし、他にも障害物があるかもしれない。非常に危険なことなんだ。しかも君、ちゃんとクリアランスを書き取って“右”って書いてあったのに!」。それと併せての講評では「アークは素晴らしかったね。最初早めに入っちゃった時は“おやおや…”と思ったけど、非常に正確なアークが描けていた。OBSは“FROM”を使ってたけど、“TO”だともっとやり易かったんじゃないのかな?」とほめてもらいました。

そして、「進入でPTSを多少オーバーしたとしても大目に見るけど、ホールディングのあれは大変重大な間違いだ。パラレルエントリーの時も風で流されてたようだし、危険を避けるという観点から言えば、エントリー方法は大した問題じゃない。あそこはティアドロップで入っていったっていいんだよ」……「とにかく、その他は十分だけど、ホールディングだけはやり直しだね。明日再試験。ホールディングやるよ」と言って、タイプライターを打ち始めました。不合格の「赤紙」です。

赤紙を渡して片付け終わった試験官が去り際「私は忙しいんだ。ホールディングさえちゃんと回ってくれてれば…このバカ者!」といってPTSで私の頭をはたいていきました…何という日本的な仕草か。本人の真意は知る由もありませんが、落ちてしまったものの、これで妙に励まされた気分になったのは虫が良すぎたでしょうか…。

訓練の最終チェックを担当してくれたマイルド教官が「お~い、最終チェックの時に同じ失敗して“間違えるなよ”って言ったじゃないか!」そう、前日も同じことをやって、しつこく周回を指示された上に念を押されたことを今さらのように思い出しました。これに合格してればあとはクロカン三昧だったのに…「でも、まぁ、明日は離陸してちゃんと管制官の指示通りにホールディング回ればそれで終わりだから」というマイルド教官、その後私の顔を見るたびIFRの訓練生に向かって「彼は優秀だよ~、実地で右に回るところを左に回っちゃった男だけどね」と言い続けています…。

■再試験
翌日スクールへ行くと、イケ面教官のブラッドが「おい、昨日どうしたんだ!?」というので説明すると、既に知っていたようで、「まぁ今日はすぐ終わるだろ」と一言。離陸してココヘッドで1周すれば終わり…それだけですが、試験官いわく「通常の実地試験と同じようにチェックするからね。ホールディングがうまく行っても他の部分がまずかったら落とすから」。ホントか冗談かは知らず、とにかく飛行機に乗り込み、出発します。

離陸。フードをかぶり、管制官の指示を受けます。そして最終ベクター、昨日と同じ指示です。右回り、6000フィート…VORに到達、本来はここでパラレルエントリーに入るところですが、思い切って010方向に左旋回、ティアドロップのエントリーに入ります。これで第1関門クリアー。後は右旋回して会合、さらに右旋回してレーストラックを描けば終了です。マイルド教官が「パラレルの後に左旋回して会合するイメージが残ってるから、どうしても勢いで左に旋回したくなるんだよね」と言っていました。さらに言えば、訓練中はなぜか左回りの指示が多かったのも「勢い」に拍車をかけたような気がします。

局上通過、右に反転、1分、右旋回、局上…もう1周するつもりで右旋回に入ると、試験官が「ちょっと見せてあげよう」と操縦桿を取ります。「だいたい良い」と言いつつ、反転時の計時開始のタイミングを知るためのOBSの使い方や効果的な風の修正方法など、長年のノウハウの一端を教えてくれました。

■つまづきながら…
ココヘッドを離脱、管制官から「Say intention」というので、ワイキキ近くの上空を通過するいつものVFRのコースで帰る旨を伝え、場周経路に向かいました。これが一番近道、計器進入でボロを出したくなかったのもあります。

ダウンウィンド、ベース、ファイナルと確実に飛び、着陸。タキシング中にようやく「おめでとう、合格!」の言葉をもらいました。よかった…つまづきつつ、ようやくIFRの資格を手にしました。これで天候を気にしないで飛べる…。

試験官から仮免許をもらい、さらにノウハウの講義を受け、IFR訓練がようやく終わりました。ロナウド教官にも礼をいいつつ経過報告、下の受付で飛行機を借りて早速IFRによるクロカンへ出発しました。あこがれのIFR、私には自家用のソロにも増して忘れられない「初飛行」になりました。

IFRでは外が見えないことを前提に訓練するため神経が消耗することもありますが、これにより空を自分の好きな時間に飛べる可能性が大きく広がります。また、精密に飛ばす技術が向上するだけでなく、常に管制官の指示を受けて飛ぶため、ある意味パイロットの負担が軽減する部分もあります。天気がいい日に飛ぶのは気持ちがいいですが、天気を気にせず飛べることもまた飛行機の楽しみの1つかと思います。機会があれば是非IFRの訓練を受けられるよう、あらためて皆さんにお勧めしてこの章を終わります。

天一郎さんに感謝

1069467726_125x116[1]Sky Cap-I,Ⅱ と自家用、計器証明の取得訓練記を投稿して下さった天一郎さん、本当にありがとうございました。
体験談を詳細にそして、判りやすく紹介されており多くのパイロット希望者、計器証明を目指す方から大変に好評を得ています。

その後・・・天一郎さんは、双発・事業用と上級資格を取得され経験を積んだ後・・・各種教官の資格に挑戦しています。
素晴らしいチャレンジ精神と、夢を夢で終わらせない行動力に心からエールを送り、今後の安全な飛行を願ってやみません。

そして近い将来・・・写真のようにコックピットで活躍してくれる事でしょう。

謝意 By Runway24.

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